熱が下がらない。37.5度より少し低い~少し高いあたりをさまよっている。元気はある。明日もこの調子なら連絡すべきところに連絡しようと思う。
漫然とだらだらしている時間が増えてきた。良くない兆候だ。いつもなら散歩に行くなり喫茶店に行くなりするところだが、体調不良ならそうはいかない。外から流入してくる良くない報せに不安は日々募るばかりで、怒りや悲しみ以前の重く暗い気分に押しつぶされそうになる。子供の頃のいくつかの夜を思い出す。環境問題のことを考えすぎて眠れない夜。いずれ訪れる死が怖くて泣きたくなる夜。実在したのかさえ怪しい、しかし確かにぼくの中に存在している夜。
このままsocial ditancingが一、二年は続くだろう、いや十年は見ておかないと……。様々な声が聞こえてくる。日々状況は変わってゆくのに、何年先のことをいたずらに不安がっても仕方がない、と頭ではわかっていても、うまく目の前の現実と折り合いを付けることができない。
明るいニュースがあった。エラリイ・クイーン『フォックス家の殺人』『十日間の不思議』が越前敏弥による新訳で復刊するそうだ。とても嬉しい。
『フォックス家』については、過去にこんなことを書いた。
ぼくが好きなクイーンは、ここからはじまる。まあ、戦前も戦後も、クイーンはまだまだこれから読んでゆく段階なのだけれど。
目の前の現実に圧倒されて何かを書こうと云う意欲はここ最近まったくなかったが、犯人当てを書こう、と思ったら不思議とアイディアが――書きたいものが――湧いてきた。混沌とした、明日も知れぬ世界だからこそ、ひとは推理小説に救われるのかも知れない。
サマセット・モーム『ジゴロとジゴレット』を読み終えた。つい饒舌が過ぎるせいで緊張が緩んでしまうのが難点であり美点であり。しかしいちばん面白く読んだのはやはり、緊張が緩むことなく結末の破局まで続く「征服されざる者」だった。
しばらく中断していた『鬼殺し』を再び読み始めた。下巻は上巻のテンションがやや薄れているようで、けっこうだるい。