ご無沙汰しています。近況報告の代わりに、2020年上半期に読んだ本のベストを挙げます。いつも通りならここに短い感想を付けるのですが、いまはその気力がありません。
いろいろなものから距離を取って、最近は比較的心穏やかに過ごしています。ときおり、怒りや憎しみに身体が震えたり、悲しみや恐怖に心がかき乱されたりして、読書を中断せざるをえない以外は、自分でも信じられないくらい、穏やかです。困ったことと云えば、小説があまり読めなくなったこと――いや、読もうと思えば読めるのだけれども、小説を読みたいと云う気持ちがずいぶん失せてしまったことです。読書家としてのスランプとでも云いましょうか、まあ、無理にでも何か読むことで心と身体を慣らしていこうと思います。
なお、挙げたタイトルは順不同です。数字は優劣を示しません。
長篇・作品集
- 安部公房『けものたちは故郷をめざす』
- 石川宗生『ホテル・アルカディア』
- 杉原智則『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』
- 真藤順丈『宝島』
- 田辺イエロウ『結界師〔全35巻〕』
- エラリイ・クイーン『盤面の敵』
- エラリイ・クイーン『第八の日』
- ハン・ガン『少年が来る』
- グレアム・グリーン『第三の男』
- ロベルト・ボラーニョ『アメリカ大陸のナチ文学』
- 甘耀明『鬼殺し〔上・下〕』
- 佐藤宣彦=編『破壊せよ、と笑いは言った』
- 池澤夏樹=編『短篇コレクションⅠ』
- 木澤佐登志『ダークウェブ・アンダーグラウンド――社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』
- 桑野隆『〔増補〕バフチン――カーニヴァル・対話・笑い』
- パウル・クレー『造形思考〔上・下〕』
- A・R・ホックシールド『壁の向こうの住人たち――アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』
- スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ『チェルノブイリの祈り――未来の物語』*1
- ジェイムズ・グリック『インフォメーション――情報技術の人類史』
- ハロルド・ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉を食う――人と動物の奇妙な関係』
短篇
- 小田雅久仁「11階」
- 瀬名秀明「負ける」
- 中井紀夫「暴走バス」
- 筒井康隆「母子像」
- 小沢信男「わたしの赤マント」
- 目取真俊「面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ)」
- 村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」
- 伊坂幸太郎「スロウではない」
- 舞城王太郎「横内さん」
- 高野文子「病気になったトモコさん」
- サキ「開けっぱなしの窓」
- ハインリヒ・ベル「X町での一夜」
- リチャード・ブローティガン「第一次世界大戦ロサンジェルス航空機」
- グレアム・グリーン「見えない日本の紳士たち」
- ロベルト・ボラーニョ「エンリケ・マルティン」
- マージェリー・フィン・ブラウン「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」
- ジョー・ヒル「挟殺」
- ロレンゾ・カルカテラ「朝のバスに乗りそこねて」
- ジーン・リース「あいつらにはジャズって呼ばせておけ」
- クリストファー・ストーン「樹木の当事者適格――自然物の法的権利について」
*1:著者名の表記は「スベトラーナ・アレクシェービッチ」だったが、ここでは広く知られており、また原語での発音に近いと云う「スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ」とした。