鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

2020年上半期ベスト

 ご無沙汰しています。近況報告の代わりに、2020年上半期に読んだ本のベストを挙げます。いつも通りならここに短い感想を付けるのですが、いまはその気力がありません。
 いろいろなものから距離を取って、最近は比較的心穏やかに過ごしています。ときおり、怒りや憎しみに身体が震えたり、悲しみや恐怖に心がかき乱されたりして、読書を中断せざるをえない以外は、自分でも信じられないくらい、穏やかです。困ったことと云えば、小説があまり読めなくなったこと――いや、読もうと思えば読めるのだけれども、小説を読みたいと云う気持ちがずいぶん失せてしまったことです。読書家としてのスランプとでも云いましょうか、まあ、無理にでも何か読むことで心と身体を慣らしていこうと思います。

 

 なお、挙げたタイトルは順不同です。数字は優劣を示しません。

長篇・作品集
  1. 安部公房『けものたちは故郷をめざす』
  2. 石川宗生『ホテル・アルカディア
  3. 杉原智則交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』
  4. 真藤順丈『宝島』
  5. 田辺イエロウ結界師〔全35巻〕』
  6. エラリイ・クイーン『盤面の敵』
  7. エラリイ・クイーン『第八の日』
  8. ハン・ガン『少年が来る』
  9. グレアム・グリーン『第三の男』
  10. ロベルト・ボラーニョ『アメリカ大陸のナチ文学』
  11. 甘耀明『鬼殺し〔上・下〕』
  12. 佐藤宣彦=編『破壊せよ、と笑いは言った』
  13. 池澤夏樹=編『短篇コレクションⅠ』
  14. 木澤佐登志『ダークウェブ・アンダーグラウンド――社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』
  15. 桑野隆『〔増補〕バフチン――カーニヴァル・対話・笑い』
  16. パウル・クレー『造形思考〔上・下〕』
  17. A・R・ホックシールド『壁の向こうの住人たち――アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』
  18. スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ『チェルノブイリの祈り――未来の物語』*1
  19. ジェイムズ・グリック『インフォメーション――情報技術の人類史』
  20. ハロルド・ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉を食う――人と動物の奇妙な関係』

 

短篇
  1. 小田雅久仁「11階」
  2. 瀬名秀明「負ける」
  3. 中井紀夫「暴走バス」
  4. 筒井康隆「母子像」
  5. 小沢信男「わたしの赤マント」
  6. 目取真俊「面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ)」
  7. 村上春樹中国行きのスロウ・ボート
  8. 伊坂幸太郎「スロウではない」
  9. 舞城王太郎「横内さん」
  10. 高野文子「病気になったトモコさん」
  11. サキ「開けっぱなしの窓」
  12. ハインリヒ・ベル「X町での一夜」
  13. リチャード・ブローティガン第一次世界大戦ロサンジェルス航空機」
  14. グレアム・グリーン「見えない日本の紳士たち」
  15. ロベルト・ボラーニョ「エンリケマルティン
  16. マージェリー・フィン・ブラウン「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」
  17. ジョー・ヒル「挟殺」
  18. ロレンゾ・カルカテラ「朝のバスに乗りそこねて」
  19. ジーン・リース「あいつらにはジャズって呼ばせておけ」
  20. クリストファー・ストーン「樹木の当事者適格――自然物の法的権利について」

 

 

 

*1:著者名の表記は「スベトラーナ・アレクシェービッチ」だったが、ここでは広く知られており、また原語での発音に近いと云う「スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ」とした。