鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

文章練習:2021/12/03

説明
  1. 写真に何が写っているのかを書く
  2. 出来たものを半分くらいまで削る
書く

 ベリンハムの駅はカナダとの国境近くにある。列車にあと一本乗ればバンクーバーだ。けれど現在時刻は六時をとっくに過ぎ、切符売り場は窓口が閉じられていた。檻状のシャッターが引かれ、その上の斜線が交差した格子窓の向こうには丸い電灯がぼんやりと灯っているけれど、受付にひとがいる気配はない。隣に掲げられた黒板には運行時刻のかわりに「列車は現在運転していません」と書き込まれていた。白のチョークで、表の罫線を無視してうねるような金釘流だ。その上にやや掠れた字で「バスが到着します」。待合室を兼ねたホールには誰もいなかった。細い木材を曲面ができるよう並べて作った、背凭れも手摺りも滑らかな曲線を持つベンチが六つ、ふたつずつを各一辺にしてコの字に置かれている。ホール全体をぼんやりと反射する床に、ベンチの脚は最低限の接地をしていた。ガムボールマシンと図体の大きい観葉植物がベンチのコの字に囲まれている。ガムボールマシンは懐かしい彩りのガムがてっぺんの透明な球体に詰め込まれていたが、機体はスチール製のスタイリッシュなデザインだ。ホールの中央にあるものだから、そう云う電灯にも見える。天井近くまで高く取られた窓から差し込む夕陽を受けてガムの球体は輝いていた。窓はアーチ状だから、ホールの床には扇形が出来ている。掃除を欠かしていないのだろう、石造りの床は曇ることなく、誰もいないホールをぼんやりと反射していた。そう、ホールには誰もいない。けれど開け放された扉の向こうのオフィスにはひとがいるらしかった。ピンクのシャツから出ている肘が、扉の枠から僅かに覗いている。(671)

削る

 ベリンハム駅はカナダとの国境近くにある。ここから列車に乗ればあと一本でバンクーバーだけれど、時刻はすでに六時を過ぎて、切符売り場はシャッターが下ろされ、隣の黒板には運行予定表のかわりに「列車は運転していません」と、罫線を無視して書かれていた。その上には掠れた字で「バスはまもなく到着」。待合室を兼ねたホールには、手摺りと背凭れの曲線こそ優雅だけれど座面の硬いベンチがコの字に並べられていた。誰も座っていないし、誰も寝ていない。コの字の真ん中にスチール製のガムボールマシンと、大きな葉が萎びて垂れる南国ふうの観葉植物。窓から差し込む日溜まりのなか、それら機械と植物だけがすっくと立って列車を待っている。
 切符窓口の隣の扉は開け放されていた。ピンクのシャツから覗く肘が、扉の輪郭から飛び出した。誰かいる。(349)

反省
  • スケッチになってなくね?
  • 小説の一場面として書いてしまっている。それで良いのだろうか。
  • とは云え、楽しい。
出典

『Fred Herzog: Modern Color』より「RR Bellingham Station, 1974」。