鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

文章練習:2021/12/04

説明
  1. 写真に何が写っているのかを書く
  2. 出来たものを半分くらいまで削る
書く

 モーテルの部屋は125号室。染みと模様の区別がつかないほど茶色く古ぼけた花柄のシーツの張られたクッションの硬いシングルベッドのそば、天板に抽斗がふたつだけついたデスクが椅子の引く余裕もないくらい窮屈に押し込められている。けれどそれ以外に家具はなく、ベッドの接する壁に広く取られた窓が開放的で、決して狭い部屋だとは思われない。灯りはまだ点けていない。外から注がれる眩しいほどの光で暗くはない。あまりに眩しく、窓もガラスの透明度が低いものだから見る角度によっては外の景色が見えなくなる。ベッドに横になると、窓の向こうは一切が白になってしまう。デスクに置かれた白い円筒のシェードがついたランプはデスクに対して大きいサイズで、トランクを載せるとデスクの上はもう一杯だった。デスクの上方には壁に台が打ち付けられ、ブラウン管のテレビが載っている。チャンネルを合わせるためのダイヤルしかない、簡素で、数世代前の機体だ。くすんだ銀灰色の直方体の背面からはコードが何本も伸びて、その先は壁の穴に消えたり、床まで下ろされて電源と接続されたり。電源を点けるとぶうううううんと鳴りながら映像を映すものの、画面が常に青黒い砂嵐のようなノイズがかかっていて、窓からの四角い光も反射して、何が映っているのかわからなかった。黒いずんぐりした影がノイズの中を横切った。人間の顔のようにも見えた。(570字)

削る

 モーテルの部屋は狭いけれど設えが簡素で、たいして窮屈とは感じない。褪せたシーツが張られているシングルベッドと、上にトランクを置いたらランプと合わせて天板がいっぱいになってしまったデスク、ふたつに挟まれて椅子が一脚。それだけだ。ベッドに横たわる。クッションが硬い。壁には窓が広く取られ、明かりを点けずとも室内は仄明るい。けれど外があまりに明るいものだから、いま見ている角度からではガラスの反射で景色すべてが白い。デスクの上方にはブラウン管テレビが取り付けられ、背面から各種のコードを部屋のあちこちに伸ばしている。電源を点けると映像が表示されるものの、ノイズがひどいのと窓からの光が反射するのとで何が映っているのかわからない。白い矩形と青黒い砂嵐に覆われる画面をずんぐりした影が横切る。それはひとの顔のようにも見える。(357字)

反省
  • 総じて軽い。精緻な描写が持つべき重さがどこにもない。
  • どうすればいいんだろう。
  • それはさておき。今回分の「それはひとの顔のようにも見える。」とか前回の「機械と植物だけがすっくと立って列車を待っている。」のような決め文や比喩が(その巧拙は別として)自分から出てくるのは意外で、次からはこれを意識してみても良いかなと思う。
出典

Stephen Shore, Room 125, Westbank Motel, Idaho Falls, Idaho, July 18, 1973.

写真は以下で見ることができる。

www.moma.org

収録されているかどうかは知らないが、Shoreの代表的作品集は以下。