鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

文章練習:2021/12/15

説明
  1. 写真に何が写っているのかを書く
  2. 出来たものを半分くらいまで削る
書く

 五十年前、バンクーバーはまだ港と蒸気船の街だった。高台からぼくはいつもフォールスの入り江を往来する大小様々な船を日がな一日眺めたものだった。入り江に向かって滑り落ちるようになだらかなすり鉢状になった街に、グランヴィル橋が長く、大きく、力強く架かっている。茶色い船体に白い客室をどんと乗せたフェリーが橋の下をくぐって客を降ろす。こちら側の岸辺には港があって、造船所や倉庫の長いトタン葺きの三角屋根がジグザグと並ぶ。向こう岸は住宅街があって、細々としたカラフルな三角屋根が、土地の傾斜で緩やかなカーブをつくって波打つようだ。高い建物は遠くに頭を出してうずくまる五、六階建てのビルくらいで、その図体は横に長いものだから立方体に近く、摩天楼とはほど遠かった。ひらけた街は夕陽を浴びると複雑に陰影をつくる一方できらきらと輝き、オレンジ色を照り返して暖かだ。街のずっと向こうには万年雪をいただく山嶺が青々と構え、それに較べればこんな街もちっぽけに見える。あの山の向こうは果てしなく厳しい自然が生き残っていた。いまもなお、だ。それは五十年経っても、あるいは街が出来てからずっと、変わらないものだろう。そう信じている。(501字)

削る

 あの頃のバンクーバーは港と蒸気船の街だった。入り江を見下ろす高台から終日船の往来を眺めて過ごしたものだ。入り江に向かってすり鉢状になった両岸を渡す長く力強いグランヴィル橋。造船所や倉庫の上でトタン葺きの長い三角屋根がつくるジグザグ。港の対岸は住宅街で、家々のカラフルな屋根が丘陵に沿って波打つ。高い建物は遠くに見える五、六階建てのビルくらいで、摩天楼なんてほど遠かった。街は夕陽を浴びるときらきら照り返して暖色に染まった。そのずっと向こうには万年雪をいただく山嶺が青々と輝いていた。あの稜線の先には汚れなき自然が残っていると信じていた。五十年経った、いまもなお。(281字)

反省
  • バンクーバーが本当に港と蒸気船の街なのかは知らない。知らないが、Herzogの写真を見ていて最近は行きたくなってきた。はじめての海外旅行はカナダも良いかもね(これのどこが反省なんだ?)
  • 書きながら結構不満が残る。何か違う感じがする。たとえば米澤穂信が〈古典部〉シリーズで舞台の神山市を描写するときどうしていたっけ。こう云うパノラマふうの、しかし大自然の驚異や美しい街の景観とは違う素朴な「見晴らしの良さ」を文章で再現するのは難しい。
  • とは云え、街を俯瞰気味に描写すると云うのは楽しい。
  • 文体の舵を取るために1日休んだとは云えこれで二週間やって来たことになる。折り返し。後半も頑張るぞ~。
出典

Fred Herzog, Westend from Granville Bridge, 1957.