鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

文章練習:2021/12/18

説明
  1. 動画に何が映っているのかを書く
  2. 出来たものを半分くらいまで削る
書く

 エントランスにあるモノクロームの写真が何枚も額縁に入れられ、チェストの上に立てかけられている。すべて屋敷の主人を写していた。フェンスに囲われた砂漠の一角で軍服姿の男たちとともに撮ったもの。フェンスには〝立ち入り禁止〟とある。しかしフェンスの向こうの砂漠にはなにもない。隣にあるのは飛行場のような整備された平らな場所で男たちが並んでいる記念写真。同い年の白人の紳士たちが寄り添って親しげだ。隅には手書きのメモがあった。〝わたしたちの生み出したものを忘れない。それは希望だった〟。写真のなかの彼より白髪の増えた彼はチェストには目もくれず、エントランスのもう一方の一角、電話の横に置かれた郵便を取り上げた。どこからの封筒か素早く確認していく。百貨店の請求書が二通。同窓会の通知。エジンバラの友人からの返信。しかし最後の茶色い封筒には宛先の住所がタイプ打ちされているだけで、差出人の名前がなかった。彼はその一回り大きな封筒に眼を留め、ペーパーナイフを手に取った。彼の背後の階段を彼の娘が昇ってゆく。彼女は抱いている赤ん坊に声をかけた。「おじいちゃんよ」。彼は振り向く。足を止めた彼女を見上げ、赤ん坊に、おやすみボビー、と笑って云った。赤ん坊は何も返さず、彼のことを見つめるばかりで、彼の娘にそのまま二階へ運ばれていった。彼は笑顔を消した。ふたたび封筒に眼を落とし、開封して、中身を取り出した。三つ折りにされた真新しい印刷用紙にはひと言だけタイプ打ちされてあった。〝ひとごろし〟。(635字)

削る

 エントランスには額縁に収められた写真が何枚かチェストの上に立てかけられている。フェンスの前で腕を組む軍服姿の男たち。〝立ち入り禁止〟とあるフェンスの向こうはひたすら砂漠が続いて何もなかった。隣の写真では飛行場の滑走路に男たちが親しげに寄り添って並んでいた。写真の隅にはメモ――〝わたしたちの生み出したものを忘れない〟。すべての写真に彼が映っていた。写真より白髪の増えた彼はエントランスのわきで電話台から封筒の山を取り上げた。なんの郵便か素早く確認してゆき、最後の茶色い一通に眼を留める。宛先がタイプ打ちされているだけで、差出人の名がなかった。背後の階段をのぼる彼の娘が、胸に抱いた赤ん坊に囁く。おじいちゃんよ。彼は振り向いて、おやすみボビー、と声をかけた。赤ん坊は何も返さず、彼のことを見つめるまま、二階へ運ばれていった。彼は微笑を消した。封筒に眼を戻す。丁寧に開封し、取り出した中身は、三つ折りにされた印刷用紙にタイプでひと言だけ書かれていた。〝ひとごろし〟。(431字)

反省
  • いい加減実践に移るべきでは、と思ってきた。
  • と云うかそろそろ実作に手をつけなければ間に合わない。
出典

『新米刑事モース――オックスフォード事件簿』第2話より。