鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

2024年下半期ベスト

「とにかく、人間はもう少し優しくならなくちゃ。そう、できれば神様の次くらいに」――久住四季『神様の次くらいに』(創元推理文庫) 優しくあれ、と思う今日この頃である。優しくなりたい、と思うし、今年も多くの方から優しくされて嬉しかった。ありがとう…

読書日記:2024/12/18~12/29 岡真理『記憶/物語』ほか

今年最後の読書日記。四作を貫くテーマはずばり、「記憶」と「物語」だろう。 Somi『未解決事件は終わらせないといけないから』(Somi) 岡真理『〈思考のフロンティア〉記憶/物語』(岩波書店) ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』(岩波文庫) 町屋良平…

読書日記:2024/11/22~12/12 小川哲『スメラミシング』ほか

年が暮れる。この冬の先に何が待っているのかぼくには皆目見当がつかなくて、けれどもひらすら寒いのは確かで、まんじりともせず動けないでいる日々だ。体調も崩した。もう駄目駄目だ。みなさんも生焼けの魚介とかぜったい食べちゃ駄目ですよ。 そのようにメ…

文学の不知火:石牟礼道子『苦海浄土』評

書評の再録。もとはカモガワ編集室さんの企画「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集全レビュー」に寄稿したものです。 漁火や街灯りが空気によって歪められることで浮かぶ、誰のものとも知れない火――不知火。その幻想的な光景を名に冠した海で水俣病は発生した…

グロテスクな二十世紀:ボフミル・フラバル『わたしは英国王に給仕した』評

書評の再録。もとはカモガワ編集室さんの企画「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集全レビュー」に寄稿したものです。 《これからする話を聞いてほしいんだ。》と小説はいきなり語りはじめる。これはすべての章に共通する書き出しで、最終章を除くと、いずれも…

悲しみの共同体:バオ・ニン『戦争の悲しみ』評

書評の再録。もとはカモガワ編集室さんの企画「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集全レビュー」に寄稿したものです。 多くのアメリカ文学やアメリカ映画のなかで描かれてきたからだろう、ヴェトナム戦争はしばしば、アメリカの戦争として語られてきた。米ソの…

ジーン・ウルフの横顔:ジーン・ウルフ『ジーン・ウルフの記念日の本』評

書評の再録です。カモガワ編集室さんの企画「〈未来の文学〉全レビュー」に寄稿したもの。 アメリカのカレンダーに載っている様々な記念日――バレンタイン・デーやハロウィーン、クリスマス、アメリカならではのものであればリンカーン誕生日などに因んだ中短…

失われた〝何か〟を求めて:ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』評

書評の再録です。カモガワ編集室さんの企画「〈未来の文学〉全レビュー」に寄稿したもの。 ジーン・ウルフの小説を読んでいると「何かが失われてしまった」と云う感覚がつきまとう。ここに空白がある、何かが失われたのだ、何が失われたのか、どうすればそれ…