その他
何かを考えたいときは散歩する。何かを考えながら散歩するときに公園が目に入ると立ち寄る。そこにはたいていブランコがある。両脚をピンと伸ばして、勢い良く漕ぐ。振り子の周期をその身で感じながら、何かを考える。多くの場合、それは夕暮れから夜中だ。…
こうなる。パワーズの出来損ないみたいだ。 きのうきょうと書き進めていたが、お話の方がどうにも掴めない。 その報せを、わたしは早朝の東京駅で受け取る。父の死。音にしてたった四文字。ひと影の疎らなプラットホームで、すべてが静止したかのように灰色…
進捗がない。 「開けなさい」 ノックと云うにはあまりに激しい、こぶしが扉を撲る音。窓の鎧戸が下ろされ明かりも落とした部屋、立方体にぴたりと詰まった暗闇のなかで、少年は布団を頭から被る。両手で耳を塞ぎ、ベッドの上に壁を向いて蹲る。瞼を閉じる。…
駄目になっていた。ひとと話すときはいつもの調子に戻るのだが、ひとりになると駄目になってしまう。ただ、用事がない限り出席しようとしていた読書会を、駄目になっているうちに無断欠席してしまった(スマホもまったく見ていなかった)ことをうけて、流石…
実家、と云っても賃貸なのだけれど、年内に引っ越すと云う。既存の家に移り住むのか、新しく土地を買って建てるのかはまだわからないが、実家を離れることは決定したらしい。同居していた祖父母は何年も前に亡くなって、息子ふたりが曲がりなりにもそれぞれ…
まえがき 「『少年サンデー』を毎週読んでいる」 そう云うと、初めて聞く相手は大概驚く。どうも自分は、漫画を、とりわけサンデーを購読するような人間には見えないらしい。確かに、自分の趣味の傾向からしても、その発想は不自然なものではないし、自分自…
国内と海外からそれぞれ50篇ずつ、独断と偏見で選びました。ジャンルは不問(ただし、ミステリとSFがほとんど)、順番は適当で、一作家一作品ずつ。 【凡例】作品名/作者名(所収誌) 藪の中/芥川龍之介(青空文庫で公開) 本陣殺人事件/横溝正史(同題短…