鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

創作

創作「帝国と云う名の地図」

突発的に書いた掌篇。地図小説です。元ネタはボルヘスのアレ。 過去のあらゆる地図よりも正確な地図をもとめたのは四人目の皇帝だったとされる。この頃、帝国の版図は建国以来最大を更新し、千年間で最も権勢を誇った。皇帝が地図を求めたのは、この治世を確…

創作「ウボンゴ小説集」

『文体の舵を取れ』の練習問題⑦ではウボンゴ小説と呼ぶべき掌篇を提出した。この記事は過去複数回にわたって発表したそれらのまとめ版。なぜまとめたのかと云うと、ウボンゴが話題に出るたびにリンク貼るのに、記事が複数あると面倒だからだ。最近はゲーム小…

創作「象と絞首刑」

名探偵の話です。最後に残ったものが勝者だ。 象と絞首刑 指し手たちがその場を去っても、時が彼らを消滅させても、儀式が終わらぬことは確かだろう。――ホルヘ・ルイス・ボルヘス「象棋」(鼓直訳) 小父さんが死んだ。高名な推理作家だった小父さんの死を多…

創作「面接」

あなたの名前を教えてください。 文子。文子と書いて、あやこ。戸籍はそう登録されているはずだけれど、母はわたしをふみと呼び続けた。父に名前を呼ばれたことは一度もない。近しい友人はわたしをぶんちゃんとかあやとか名付けた。大学では烏丸と呼ばれるこ…

書きやすい文体で書くとなると

こうなる。パワーズの出来損ないみたいだ。 きのうきょうと書き進めていたが、お話の方がどうにも掴めない。 その報せを、わたしは早朝の東京駅で受け取る。父の死。音にしてたった四文字。ひと影の疎らなプラットホームで、すべてが静止したかのように灰色…

進捗がない。 「開けなさい」 ノックと云うにはあまりに激しい、こぶしが扉を撲る音。窓の鎧戸が下ろされ明かりも落とした部屋、立方体にぴたりと詰まった暗闇のなかで、少年は布団を頭から被る。両手で耳を塞ぎ、ベッドの上に壁を向いて蹲る。瞼を閉じる。…