鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

総括・まとめ

2023年下半期ベスト

今年は過去数年間のうちで、もっとも手応えをもって読書できた一年だったと思う。読みながら考え、考えながら読む。理由はおそらく、積極的に本文に書き込むようになったこと、それと、メモ帳を普段から使い倒すようになったことだろう。それは書きながら読…

2023年上半期ベスト

私はにせものだ。私が何をやっても世界は変わらない。でも、私は遠いところからこの電動ベッドの枕元までやって来て、あなたの話し相手となり、あなたの心を変える。――リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』 久しぶりに会った先輩と、なぜ小説を読むの…

「我々は前向きに思い出す」

何も急ぐことはありません。生長を待たなくてはなりません。じっくり育ってゆかせなくてはなりません。やがていつかその時が来たら、立派な作品ができるというのなら、それに越したことはありません。 わたしたちは探求してみなくてはなりません。そのために…

2022年下半期ベスト

どの一瞬にも、歴史が傍らをよぎってゆく音が静かに鳴り響いている。今福龍太『原写真論』 ひと息のあいまで無為に過ぎていったようにも、目まぐるしく変転したようにも思われる半年でした。昨日と今日で何かがすっかり変わってしまっているのに、それを知っ…

2022年上半期ベスト

これくらい単純なことがあるだろうか?――リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』(みすず書房) 複雑に延び、繋がり、分断された露地を進んだ。――小川哲『地図と拳』(集英社) 上半期ベストの季節がやってきました。やって来てしまいました。いままでは半期…

2021年下半期ベスト

だけど、もうだれも逃げられはしないんだ。トミーはポケットに両手をつっこみ、反対方向に歩きだした。はじめはゆっくりとした歩みだったが、しだいに速くなり、最後にはほとんど駆け足になっていた。まるで骨の中身がすっかり空っぽになってしまったようだ…

2021年上半期ベスト

ですからお爺さんがもしも又奇蹟を見たいならば、それは僕等の周囲で常に発見されるのです。至る所で。世界は無量の謎であり、お伽話の中にある幾ら経っても減らない打出の小槌なのです。毎日毎日が新らしい奇蹟の啓示です。 ――地味井平造「魔」 単行本と短…

2020年上半期ベスト

ご無沙汰しています。近況報告の代わりに、2020年上半期に読んだ本のベストを挙げます。いつも通りならここに短い感想を付けるのですが、いまはその気力がありません。 いろいろなものから距離を取って、最近は比較的心穏やかに過ごしています。ときおり、怒…

2019年上半期ベスト

上半期が終わるのを1か月早く勘違いしていた気もします。気のせいかも知れません。いずれにせよ6月が終わったので、今年読んだ作品の中からベストを挙げていきたいと思います。国内海外問わず、長篇(および短篇集)と短篇で20作品ずつ、順不同です。 長篇(…

2019年の抱負

新たな年がはじまりました。昨年末はブログと云う格好の舞台を用意しておきながら一年の総括のようなものをやっていませんでした。*1今さらやったところで遅いですから、どうせやるなら今年の話をしましょう。 と云うわけで、2019年の抱負をつらつら述べてい…