米澤穂信
あてなるもの。薄色に白襲しろがさねの汗杉かざみ。雁のこ。削り氷に甘葛あまづら入れて、あたらしき金鋺かなまりに入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪のふりかかりたる。いみじううつくしき児ちごの、いちごなど食ひたる。――『枕草子』第四十段 (※…
《わたしの次善》――それはふたりで閉じているように見えて、世界に向けて開かれている、そんな関係である。この広く、ままならない、驚異と脅威に満ちた世界で、ふたりは一緒に並んで歩く。ひとりではなく、ふたりで。 寄稿のお知らせです。 〈小市民〉シリ…
アブストラクト 『氷菓』は米澤穂信による小説作品〈古典部〉シリーズの第一作であり、作中における古典部の文集の名前でもある。三十三年前に古典部で起こった出来事を調べ、謎めいた文集タイトルに秘められた意味を解くこの物語は、題材こそ架空であるもの…
Abstract『氷菓』は米澤穂信による小説作品〈古典部〉シリーズの第一作であり、作中における古典部の文集の名前でもある。三十三年前に古典部で起こった出来事を調べ、謎めいた文集タイトルに秘められた意味を解くこの物語は、題材こそ架空であるものの、歴…
この半年ほど、こう云う勉強会に参加していました。 #文学フリマ東京40 に参加します2025.5.11(日)️東京ビッグサイト南1〜2ホール M-37 https://t.co/kIQiMmFOvS阿部幸大『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』をもとに勉強会をし、その成果…
読むのはほとんどの場合、書評だ。好きだとあらかじめ知っている本に目を通す以上のことをするには、残された時間はあまりにも少ない。――リチャード・パワーズ「メジャーズ滝へ」 京大生協の書評誌〈綴葉〉で書評に参加してからそろそろ一年経つ。こちらでは…
「とにかく、人間はもう少し優しくならなくちゃ。そう、できれば神様の次くらいに」――久住四季『神様の次くらいに』(創元推理文庫) 優しくあれ、と思う今日この頃である。優しくなりたい、と思うし、今年も多くの方から優しくされて嬉しかった。ありがとう…
十月が終わる。〆切やイベントに追われて忙しくしていたせいか、長かったような、それでいて、瞬く間にすぎたようでもある。 有栖川有栖『日本扇の謎』(講談社ノベルス) 北村薫『ニッポン硬貨の謎』(創元推理文庫) 米澤穂信『クドリャフカの順番』(角川…
お知らせ:『オブスクラ』増刷しました。 washibane.booth.pm 巽昌章『論理の蜘蛛の巣の中で』(講談社) 米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件』(創元推理文庫)※ネタバラシ有 髙村薫『レディ・ジョーカー』(新潮文庫) 巽昌章『論理の蜘蛛の巣の中で』(講…
ときに最大のトリックは、何かがトリックでしかないと主張したり、容易にそれを暴くことができると主張したりすることのうちにあるのだ。――トム・ガニング『映像が動き出すとき』*1 云うまでもないことだが、米澤穂信は言葉と云うものに注意を払い続ける作家…
同人誌をつくったり盆休みに祖母を訪ねたり集中講義に潜ったり犯人当てを書いたりしているうちに八月はあっと云う間に過ぎ去っていった。何がやばいって就活とか研究とか一切手を付けなかったことだよ。同期はインターンに行っとるぞ調査に行っとるぞそれで…
図らずも、と云っても半分くらいは必然的に、夏特集となった。 青羽悠『凪に溺れる』(PHP文芸文庫) 恩田陸『ユージニア』(角川文庫) 山尾悠子『初夏ものがたり』(ちくま文庫) 米澤穂信『愚者のエンドロール』(角川文庫) 青羽悠『凪に溺れる』(PHP文…
生きている世界では永遠に続くものはありませんが、だからこそ、生は無限に続いていくのです。――ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』(奥野克巳訳、左右社) 何かが終わりかけていると云う感覚のなか、読むことも書くこともなんとなく行き詰っているよ…
京大ミステリ研50周年イベントに出席して仲違いしていた先輩と和解したり、後輩から思いがけない感謝を受けたり、世界について考えたり、人生に思いを馳せたり、あとは学会に出たり三峰結華さん*1と出会ったりと忙しい日々だった。なかでも三峰結華さんの衝…
世界が壊れる音が聞こえる。小市民の時代は終わる。 あるいはそれでも、わたしたちは小市民でしかいられない。 米澤穂信『巴里マカロンの謎』 米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』 米澤穂信『巴里マカロンの謎』 「パティスリーはパティスリーにふさわ…
「仕方がありません。それが、私とあの子が払う代償というものでしょう」 ストイックな短篇集だ。定規やコンパスで作図された幾何学模様を思わせる。謎があって、解決がある。その抽象的な運動のために、ぎこちないほどに淡々とした文章と、警察小説の体裁が…
僕はあまり、そうは思わない。誰でも少しずつ嘘をつくのだから、ひとしずくでも嘘が混じればすべてが嘘と考えていたら、この世のすべては嘘になる。そんなことは松倉だって……いや、松倉の方が僕よりもよくわかっているはずなのだから、結局僕たちは、同じも…