小川哲
『地図と拳』は、云うなれば、「明後日」にある夢の話が、現実という「明日」の話に敗北する物語だ。 来る文学フリマ東京41にて頒布される雑誌『HYPE FICTION』に、特集〈偽史の想像力〉の一環として、註含め一万字ほどの評論を書きました。サークルは〈型月…
ならば本書は「小川哲らしくない」のだろうか? もちろん、これまでに見られなかったようなことが本書では試みられているようである。けれどもそれは決して「小川哲らしくない」ことを意味しない。本作はたしかに「小川哲最新作」として、これまでの著作の流…
読むのはほとんどの場合、書評だ。好きだとあらかじめ知っている本に目を通す以上のことをするには、残された時間はあまりにも少ない。――リチャード・パワーズ「メジャーズ滝へ」 京大生協の書評誌〈綴葉〉で書評に参加してからそろそろ一年経つ。こちらでは…
年が暮れる。この冬の先に何が待っているのかぼくには皆目見当がつかなくて、けれどもひらすら寒いのは確かで、まんじりともせず動けないでいる日々だ。体調も崩した。もう駄目駄目だ。みなさんも生焼けの魚介とかぜったい食べちゃ駄目ですよ。 そのようにメ…
今年は過去数年間のうちで、もっとも手応えをもって読書できた一年だったと思う。読みながら考え、考えながら読む。理由はおそらく、積極的に本文に書き込むようになったこと、それと、メモ帳を普段から使い倒すようになったことだろう。それは書きながら読…
似たようなことだが、いつのまにか私たちの地図が、自分で夢を見るようになった。だから毎晩、地図が眠りこみ、都市はたえまなく形を変えている。円かったかと思えば正方形になり、山頂にあったかと思えば海底に沈んでいる。煙のような都市。人の声すらしな…
新刊と、いまさら読んだタイトルをひとつずつ。前者はミステリ研のDiscordに投稿したものを再録した。後者はいまここで書いているもので、作品の核心と思われる箇所に踏みこむ。未読ならば注意されたい。 小川哲『君が手にするはずだった黄金について』 京極…
院試に受かった。文転や転学部を目論んだり、休学したり、留年したり、研究室を移ったり、ああでもないこうでもないと迷った挙句、隘路に嵌まって時間の止まったようだったこの数年間の道のりが、ようやく開けたような気がする。道が開けたところでどこにた…
お仕事の告知です。『SFマガジン』2023年10月号の特集「SFをつくる新しい力」に参加しております。SF小説の入門作品を薦めるミニレビューで、ぼくは2作品を担当しました。未読の方の道標となっていれば幸いですが、さて、道標となるようなレビューとは何か。…