鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年下半期ベスト

だけど、もうだれも逃げられはしないんだ。トミーはポケットに両手をつっこみ、反対方向に歩きだした。はじめはゆっくりとした歩みだったが、しだいに速くなり、最後にはほとんど駆け足になっていた。まるで骨の中身がすっかり空っぽになってしまったようだ…

読書日記:2021/12/25~12/29

たぶん今年最後の読書日記。年間ベスト記事を年内に書けるだろうか。 ジョン・ディクスン・カー『四つの凶器』(創元推理文庫) 滝口悠生『死んでいない者』(文春文庫) 小森収・編『短編ミステリの二百年〈6〉』(創元推理文庫) ジョン・ディクスン・カ…

読書日記:2021/12/21~12/24

クリスマス・イヴはラファティを読んでAKIRAを観てランジャタイで笑っていました。これはこれで充実している。 感想はミステリ研のDiscordサーバーに投稿したものを転載した。ひとに読んでもらうことを前提としているので、感想と云うより書評に近い文体を取…

読書日記:2021/12/17~12/20+α

クリスファー・プリースト『魔法』(ハヤカワ文庫) カーター・ディクスン『白い僧院の殺人』(創元推理文庫) 『カモガワGブックス Vol.3 〈未来の文学〉完結記念号』(カモガワ編集室) クリスファー・プリースト『魔法』(ハヤカワ文庫) そう、おそらく…

文章練習:2021/12/18

説明 動画に何が映っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く エントランスにあるモノクロームの写真が何枚も額縁に入れられ、チェストの上に立てかけられている。すべて屋敷の主人を写していた。フェンスに囲われた砂漠の一角で軍服姿の男た…

読書日記:2021/12/10~2021/12/15

過去最高に創作意欲が盛り上がっている。何か書けると良いですね。 感想は例によって例のごとく、ミステリ研のDiscordサーバーに投稿したものを転載した。 ジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』(新潮クレスト・ブックス) 「冬のマヨルカ五日間の旅」に出…

文章練習:2021/12/16

説明 動画に何が映っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 雨のなかを自動車が走っている。フォルクスワーゲンのタイプ1。またの名をカブトムシ。木立を突っ切る道は舗装されていない。街灯もない、夜明け前の暗闇をふたつのフロントライト…

文章練習:2021/12/15

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 五十年前、バンクーバーはまだ港と蒸気船の街だった。高台からぼくはいつもフォールスの入り江を往来する大小様々な船を日がな一日眺めたものだった。入り江に向かって滑り落ちる…

文章練習:2021/12/14

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 彼の家はハウ通りとネルソン通りの交差点にあって、バンクーバーの、そうでなくともわたしたちの町のなかではちょっとした名物だった。ハウ通りに沿って四軒の店が並び、同じ大き…

文章練習:2021/12/13

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 洋服店のウインドウの手前、張り出したスペースには大きさの異なる円盤を三つ大きい順に下から重ねている円錐状の台が置かれ、小物やポーチが陳列されてある。並べてあるのは白い…

文章練習:2021/12/12

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 玄関の呼び鈴を何度押しても応答はなかった。ガレージには車も駐められているし、家の明かりはついている。居留守と云うには住民の存在を隠そうともせず、来訪者を拒もうともして…

文体の舵を取れ:練習問題⑦視点(POV)問一

四〇〇〜七〇〇文字の短い語りになりそうな状況を思い描くこと。なんでも好きなものでいいが、〈複数の人間が何かをしている〉ことが必要だ(複数というのは三人以上であり、四人以上だと便利である)。出来事は必ずしも大事でなくてよい(別にそうしてもか…

文章練習:2021/12/10

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 埃っぽいと感じた。けれどたぶんそれは、店内に充満する酒気を帯びた呼気と、換気の効いていない澱んだ空気、大人たちのよく意味のわからない会話、声、喧噪、そのなかでひとり紛…

読書日記:2021/12/05~2021/12/08

進路に悩んでいる。 もしかすると来年で卒業するかも知れない。しないかも知れない。 いずれにせよ、来年一年かけて、ミステリ研における「卒業研究」と云うべきものを残したいと思っている。 それはさておき読書日記。ミステリ研のDiscordサーバーに書いた…

文章練習:2021/12/09

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 高らかに演奏されているはずの『星条旗』は耳を貫くようなひび割れた喇叭の音とまさしく打撃の響きしかしない太鼓の音に分裂し、それ以外の楽器の音色はただの音階へとばらばらに…

文章練習:2021/12/08

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く エレベーターに客が入る。ボタンが押される。エレベーターが上昇する。エレベーターから客が出る。エレベーターに客が入る。ボタンが押される。その繰り返し。それが彼女の仕事だ…

文章練習:2021/12/07

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 中華街の店、ジャンルを問わず古道具を売るその店先のワゴンの前に、一家なのだろう四人の男女がたむろしている。とくにワゴンに興味を示しているのはいちばん年少の男の子で、明…

文章練習:2021/12/06

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 交叉点の角に、何十年も開いている理髪店。通りに面したウインドウは曇りなく磨かれて店内を薄く反射しているけれど、ガラス表面で箱文字ふうに描かれてある白と橙の「MAIN BARBER…

文章練習:2021/12/05

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く なんでもない写真に見えた。なにかを記念したわけでも、なにかを目撃したわけでもない、ただカメラを構えてシャッターを切ったような一枚。並木が枯れているから冬だろう。川沿い…

文章練習:2021/12/04

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く モーテルの部屋は125号室。染みと模様の区別がつかないほど茶色く古ぼけた花柄のシーツの張られたクッションの硬いシングルベッドのそば、天板に抽斗がふたつだけついたデスクが椅…

文章練習:2021/12/03

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く ベリンハムの駅はカナダとの国境近くにある。列車にあと一本乗ればバンクーバーだ。けれど現在時刻は六時をとっくに過ぎ、切符売り場は窓口が閉じられていた。檻状のシャッターが…

文章練習:2021/12/02

説明 写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 書く 街の大通り。五車線はあって幅が広い。住宅ではなく店が並び、歩道の上の視界を幾つもの看板が塞いでいる。横長の青い矩形。縦長の赤い矩形。カフェ。バー。食糧品店。雑貨屋。そ…

文章練習:2021/12/01

写真に何が写っているのかを書く 出来たものを半分くらいまで削る 切りがないので全体の作業が1時間程度で収まるように できる限り やれ 書く 工場の裏へ通じる袋小路。イギリス積みされた煉瓦の外壁が高く聳えて、狭く縁取られた曇り空に低い煙突が飛び出て…

読書日記:2021/11/25~30

進路に悩んでいます。 それはそれとして読んだ小説の感想。ほかにも研究書とか読んでますが、これまでと同様に省きました。そう、これまでも小説の感想しか取り上げていなかったのです。 感想もいままで通り、ミステリ研Discordサーバーに投稿したものを再掲…

読書日記:2021/11/18~22

クリスティー特集でもしようと思ったけれどミルハウザー読んじゃった。 ミルハウザーの短篇は、こう云うと褒めているようには聞こえないかも知れないが、オーソドックスな海外文芸っぽさと緻密な語りの技巧が冴えていて、妙に安心できる。小説を読むと云うよ…

文体の舵をとれ:練習問題⑥老女

今回は全体で一ページほどの長さにすること。短めにして、やりすぎないように。というのも、同じ物語を二回書いてもらう予定だからだ。 テーマはこちら。ひとりの老女がせわしなく何かをしている──食器洗い、庭仕事・畑仕事、数学の博士論文の校正など、何で…

読書日記:2021/11/06~14

今回の読書日記はテーマなし。読んだあとに振り返って浮かび上がってくるテーマがあるとすれば「虚実」あたりか。 ミステリ研のDiscordサーバーに投稿した感想を転載。 ジュリアン・バーンズ『イングランド・イングランド』(創元ライブラリ) 時が過ぎ、ひ…

読書日記:2021/10/25~30【ロス・マクドナルド特集】

ロス・マクドナルドを3冊読んだ。いずれも中後期の作。今度は初期作にも手を出そうと思う。 感想はいずれもミステリ研のDiscordサーバーに投稿したものを再掲した。 ロス・マクドナルド『ウィチャリー家の女』(ハヤカワ文庫) 消えた娘を探してほしいと云う…

読書日記:2021/10/18~22【ヘレン・マクロイ特集】

ヘレン・マクロイを三冊読んだ。いずれも40年代の作品。同時代をこんなにも突き放して見ることができていたのかと驚く。 感想はいずれも、ミステリ研Discordサーバーに投稿したものを再掲した。 ヘレン・マクロイ『家蠅とカナリア』(創元推理文庫) 侵入し…

文体の舵を取れ:練習問題⑤簡潔性

一段落から一ページ(四〇〇~七〇〇文字)で、形容詞も副詞も使わずに何かを描写する語りの文章を書くこと。会話はなし。 提出作品 チャーリー・フォージャーは一九五四年にフラグスタッフで生まれ、七十二歳で亡くなるまでアリゾナを出なかった。大学で機…