笠井潔『バイバイ、エンジェル』(創元推理文庫) 円城塔『文字渦』(新潮文庫) fudaraku『竜胆の乙女:わたしの中で永久に光る』(メディアワークス文庫) 三津田信三『首無しの如き祟るもの』(講談社文庫) 笠井潔『バイバイ、エンジェル』(創元推理文…
ドラマ『古畑任三郎』がTVerで配信されているとのことで見返してみたら、やっぱり倒叙ミステリって良いなあ、と思ったのでむかし書いた中篇を引っ張り出してきた。一部ロジックが甘い、または破綻しているところがあるのと、題材に対する理解が足りないのと…
ケヴィン・リンチ『廃棄の文化誌:ゴミと資源のあいだ』(工作舎) 宮田眞砂『セント・アグネスの純心:花姉妹の事件簿』(海社FICTIONS) 澤木喬『いざ言問はむ都鳥』(創元推理文庫) ケヴィン・リンチ『廃棄の文化誌:ゴミと資源のあいだ』(工作舎) 廃…
瞬間と人生の話です。 世界の中に身を置き、外の世界を発見するのと同時に、自らを見出す。外の世界が私たちを形成するが、同時に私たちはその世界に影響を与えることもできる。絶え間ない対話の中で一をなす、内と外、そのふたつの世界のあいだに均衡を打ち…
京大ミステリ研50周年イベントに出席して仲違いしていた先輩と和解したり、後輩から思いがけない感謝を受けたり、世界について考えたり、人生に思いを馳せたり、あとは学会に出たり三峰結華さん*1と出会ったりと忙しい日々だった。なかでも三峰結華さんの衝…
日記を付けなよ、とあなたは云った。あなたを見送る駅のホームにはわたしたち以外に誰もいなかった。留年って、年が留まるって書くでしょう、とあなたは云った。それって、時間が止まるってことじゃない? どこまで真剣に云っているのかわたしにはわからなか…
最近、ソーシャルゲーム『アイドルマスター:シャイニーカラーズ』を始めた。ゲームに対して、あるいはアイドル文化について、そして人間と云うものについて思うところはたくさんあるが、ここはひとつ、その土台と云うか、出発点のようなものを示しておくべ…
世界が壊れる音が聞こえる。小市民の時代は終わる。 あるいはそれでも、わたしたちは小市民でしかいられない。 米澤穂信『巴里マカロンの謎』 米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』 米澤穂信『巴里マカロンの謎』 「パティスリーはパティスリーにふさわ…
コーマック・マッカーシー『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』 松浦寿輝、田中純、沼野充義『徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術』 コーマック・マッカーシー『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』 キャンバスのバッグをとって台所に入り缶詰とコーヒー…
全体的にコメント短め。もう3月終わるってマジ? ロバート・ダーントン『検閲官のお仕事』(みすず書房) カルロ・ギンズブルグ『裁判官と歴史家』(平凡社) 大岡昇平『事件』(創元推理文庫) ロバート・ダーントン『検閲官のお仕事』(みすず書房) 東ド…
『夜になっても遊びつづけろ:よふかし百合アンソロジー』(ストレンジ・フィクションズ,2021)に書いた短篇。コーマック・マッカーシーの遺作『通り過ぎゆく者』を読んでいたらふと思い出したので、もう発表から3年も――3年も?!――経つことも踏まえ、じゃ…
国内ミステリ三冊。『禁じられたジュリエット』の感想については核心的なネタバラシを避けるものの、相当内容に踏みこんでいるので未読の方はご注意を。 北山猛邦『天の川の舟乗り:名探偵音野順の事件簿』(創元推理文庫) 横溝正史『八つ墓村』(角川文庫…
S・S・ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』(創元推理文庫) エドガー・アラン・ポー『ポー傑作選1 黒猫』(角川文庫) ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』(東京創元社) S・S・ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』(創元推理文庫) 「そんなはずはない」ヴァン…
上雲楽さんへ(ところでこのお名前、苗字と名前の区別とかあるのでしょうか? 前回の手紙では字面でなんとなく「上雲さん」と呼んでしまいました。とりあえずここではフルネームでお呼びしますね、まどろっこしくてごめんなさい) お手紙、どうも。 けれども…
深夜の突発企画。こう云うのは勢いでやるもんだ。選んだのは十二冊。黄金の十二ゴールデン・ダズンである。 アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』 アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』 アガサ・クリスティー『鏡は横にひび割れて』 アガサ・クリ…
上雲楽さん お手紙、どうも。伊勢田勝行=伊津原しまと云うつくり手のことは初めて知りました。とりあえず検索をかけて、ニコニコニュースでのインタビューを読み、そこで紹介されていたMVを見ました(短かったので)。なんと云えば良いのか、圧倒されまし…
箱の後部に突き出た摘みを回して、ゼンマイを巻く。ゼンマイの動作によって歯車が回転し、それに接続された真鍮のシリンダーがゆっくりと回転を始める。シリンダーには小さなピンが無数に打たれており、これが台座に設置された櫛歯コームを弾くことで音が鳴…
有栖川有栖『長い廊下がある家』『妃は船を沈める』(光文社文庫) カルロ・ギンズブルグ『糸と痕跡』(みすず書房) 有栖川有栖『長い廊下がある家』『妃は船を沈める』(光文社文庫) 「いい心掛けだ。力余って尻餅を搗くようなスイングは見ていて気持ちが…
J・D・サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』(柴田元幸訳,河出書房新社) ケヴィン・リンチ『時間の中の都市』(東京大学大谷幸夫研究室訳,鹿島出版会) ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』(奥野克巳訳,亜紀書房) J・D・サリンジャー『ナイン・…
巨大さんへ*1 お手紙、どうも。 乗代雄介『旅する練習』はぜったいに読もうと思いながら、いくらかのたじろぎによってまだ読めていない小説です。たじろいでいるうちに文庫化してしまいました。なぜたじろいでいるのかと云えば、これまでに読んだ乗代作品――…
大変な年明けになった。地震、事故、火災。至るところで人びとが、理不尽によって傷つき、命を落としている。世界が音を立てて壊れてゆくような気がする。もうとっくに腐り始めているのかもしれないが。 私生活においても、熱が出るわ、肺に穴が開くわ、身体…
2024年がはじまりました。今年もよろしくお願いします。 昨年末、周囲でブログがたくさん稼働している音が響いていたので、ここはひとつ、ブログを継続的に書く――感想を書き続けるために個人的に考えてきたことを公開しようかと思います。数ヶ月前、ミステリ…
今年は過去数年間のうちで、もっとも手応えをもって読書できた一年だったと思う。読みながら考え、考えながら読む。理由はおそらく、積極的に本文に書き込むようになったこと、それと、メモ帳を普段から使い倒すようになったことだろう。それは書きながら読…
アラン・コルバン『記録されなかった男の歴史:ある木靴職人の世界1798‐1876』 イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス『シェイクスピアの記憶』 アンソニー・ドーア『すべての見えない光』 アラン・コルバン『記録されなかった男の…
イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』(米川良夫訳、河出文庫)を読んだ。大いに感銘を受けた。具体的な感想はまたどこかで書くとして、ひとまず、生涯最良の小説のひとつに挙げて後悔はないだろうと思う。けれどもそれほどに素晴らしい小説なのに読んだ端…
最近はやたらに読んでやたらに書いている。そのせいでスケッチが疎かになってしまっているけれど、書くことも読むことも線を引くことも、同じ線上に置かれるならば、それも当たり前なのかもしれない。 北村薫『遠い唇:北村薫自選日常の謎作品集』 アドルフ…
似たようなことだが、いつのまにか私たちの地図が、自分で夢を見るようになった。だから毎晩、地図が眠りこみ、都市はたえまなく形を変えている。円かったかと思えば正方形になり、山頂にあったかと思えば海底に沈んでいる。煙のような都市。人の声すらしな…
あとに残るのは言葉。ただ言葉だけだ。われわれは言葉の外に出ることはできない。音楽がドレミの外では何も演奏できないように。映像が光の外では何も映すことができないように。すべてはこのどうしようもない窮屈さのなかで一切が遅れてゆく。そこには本当…
卒業研究の進捗が芳しくない。それはそれとして本は読む。 スーザン・ソンタグ『他者の苦痛へのまなざし』 写真は繰り返し立ち現れる。写真は単純化する。写真は扇動する。写真はコンセンサスという幻覚を創り出す。 藤原辰史先生の《現代史概論》に潜ってい…
読書日記なのでさらっと書くつもりだったが、どれも本当に良い本だったのでじっくり書いてしまった。 結城正美『文学は地球を想像する:エコクリティシズムの挑戦』 石岡丈昇『タイミングの社会学:ディテールを書くエスノグラフィー』 本田晃子『革命と住宅…