鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

エッセイ

私的オールタイムベスト・ミステリ

深夜の突発企画。こう云うのは勢いでやるもんだ。選んだのは十二冊。黄金の十二ゴールデン・ダズンである。 アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』 アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』 アガサ・クリスティー『鏡は横にひび割れて』 アガサ・クリ…

連鎖/転用:あるいは、ピタゴラ装置について考えるときに考えるいくつかのこと

箱の後部に突き出た摘みを回して、ゼンマイを巻く。ゼンマイの動作によって歯車が回転し、それに接続された真鍮のシリンダーがゆっくりと回転を始める。シリンダーには小さなピンが無数に打たれており、これが台座に設置された櫛歯コームを弾くことで音が鳴…

感想をどう書くか/なぜ書くか/何を書くか:あるいは、君たちはどう生きるか

2024年がはじまりました。今年もよろしくお願いします。 昨年末、周囲でブログがたくさん稼働している音が響いていたので、ここはひとつ、ブログを継続的に書く――感想を書き続けるために個人的に考えてきたことを公開しようかと思います。数ヶ月前、ミステリ…

収集・記憶・物語:あるいは、数字に何ができるか?

院試に受かった。文転や転学部を目論んだり、休学したり、留年したり、研究室を移ったり、ああでもないこうでもないと迷った挙句、隘路に嵌まって時間の止まったようだったこの数年間の道のりが、ようやく開けたような気がする。道が開けたところでどこにた…

壁と言葉、あるいは日々を生きることについて

パリと聞いて、何を思い浮かべるだろう。凱旋門。エッフェル塔。セーヌ川。ぼくは曲がりなりにもミステリファンなので、パリと云えば矢吹駆を思い出す。アパートではなくアパルトマン。アリバイではなくアリビ。ニューヨークやロンドンは小説で読み慣れてい…

壁の向こうの住人

しばらく前のことだ。実家に帰ると、隣家とのあいだに壁が建っていた。スチール製の薄い板を縦に設えただけの簡素な造りだったけれど、背は二メートルあってそうそう乗り越えることはできず、視線を交わすこともできない、明確な拒絶の意志を感じさせる壁だ…