鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「オブスクラ」:『蒼鴉城』第48号

京都大学推理小説研究会の機関誌『蒼鴉城』の第48号が完成しました。モノクロのデザインにだまし絵のようなイラストがいままでになくクール。ぼくは会員として校正を手伝っています。逆に云えばそれ以外は主として後輩諸氏が編集をがんばってくれています。…

ここから先は何もない:映画『すずめの戸締まり』について

「モーリス、モーリス、どうか希望を捨てないで」 ――グレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』(ハヤカワ文庫epi) これはフィクションだ。そのつもりで。 昔の話だ。まだきみが科学少年の、ついに孵化することのない卵でしかなかった頃、家族とどこか…

読書日記:2022/11/06 沢木耕太郎『天路の旅人』

地図も磁石も持たない旅では、人に訊くより仕方がない。そして、それを信じるしかない。 沢木耕太郎はもう無名ではない。彼は防衛大学校の前で体当たりの取材を繰り返す何者でもない男ではないし、身体ひとつでユーラシアを横断する無鉄砲な若者でもない*1。…

読書日記:2022/11/03 井上荒野『小説家の一日』

これも夫が言った通り、子供ではなく母親の視点で書いた。自分自身からは離れるように書いていったが、離れようとすればするほど、近づいてくるものがあるようだった。どのみち完成しないのだからと妙に思い切りがよくなって、自分のことを書こうと思うと、…