授業が始まってバイトも再開してそれでも本を読んでいると日記を書く時間がなくなる。いや、日々に無駄な時間は多いのでそれを削ればなんとかなるのだろう(さっきも半時間くらいぼうっとtwitterを眺めていた)、やはり問題は時間ではなく、気力である。バイトや講義で体力的に疲れていると云うのもあるし、日々の嫌なニュースにも精神的に疲れてしまった。ニュースをめぐる、様々な言説にも。
緊急事態宣言が解除され、来たるべき第二波へ向けてつかの間の平穏が戻りつつあるなか、国内でも海外でも差別や政治の問題が――もちろんCOVID-19の話題も収まってはいない――次々と噴出してタイムラインを埋め尽くしている。それらを追いかけることはやぶさかではないけれど、それらの問題、ないし問題についての言説に何かしらの反応を示すこと――twitterでのfavも含む――が嫌になってきた。問題そのものに思うところは多々あるが、なんだか強制的に《誰がいちばん状況を俯瞰的かつ冷静に、あるいは正義感や信念を持って判断しているか》のレースに参加させられている気分になる。もちろんこれは錯覚であるし、極めて冷笑的な見方だ。だからこそ余計に嫌なのだ。
気にしたいのは社会全体のことだけではない、ごくごく個人的な、進路や将来についての不安もある。それらはもちろん、社会の問題と密接に絡まっているのだけれど。下宿でひとり生活していると、いろいろ考え込んでしまうのだ。
もっと個人的なことで云えば、夏が近づくなか、台所やトイレにわくようになった羽虫を何とかしたい。家にそれなりの数の虫がいる、たとえ殺虫剤や防虫剤で対策したところで、もしかしたら存在しうるかも、と思うだけで気持ち良く生活することができなくなる。
もうちょっと書くつもりだったがこの辺でやめる。少しセンシティヴな領域へ足を突っ込んだ気がしたからだ。代わりに、最近読んだ本の感想を置いておこう。
【(P[く]2-1)黒揚羽の夏 (ポプラ文庫ピュアフル)/倉数 茂】を読んだ本に追加 → https://t.co/fRQnyqeHOm #bookmeter
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月26日
ジャンルをシームレスに越境しながら、夢を見るようで、しかし醜い現実を垣間見る、子供たちが成長するひと夏を描いているわけだが、全体をまとめきるだけの膂力が足りていない。文体と台詞を磨き抜けば押し切ることは可能だったはずだけれど……。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月26日
磨いていないな、と感じるのはいささか退屈な説明台詞やシーンの接続が滑らかでないところが随所に見られるから。キャンプのシーンやフィルム上映のシーンなどはやたら力が入っているだけに節々が巧く動いていないとかえってバランスの悪さを覚える。そのアンバランスは魅力になったかも知れないのに。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月26日
巻頭に地図が掲げられていて、それなりに発達した場所と時代に置いてゆかれたような場所がまるで近くに同居したそのアンバランス――街のアンバランスであり、手書きのアンバランスでもある――は物語全体の印象と一致している。せめてこの地図≒小説がもっと膂力を持っていれば……
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月26日
記憶と云う主題も扱いかねている感があり……、もっと深掘りしても良い、と云うか、それを利用して立て付けの悪いところを仕様とすることもできたのでは、と云うか……。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月26日
【いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)/河野 裕】を読んだ本に追加 → https://t.co/gmY4aDVywP #bookmeter
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月27日
読書会の課題本。再読のはずだが、島のシステムと、いまひとつ面白がれなかったと云う以外すっぱり忘れていた。今回はそれなりに面白く読めたところもあるのだけれど、プロットや文章のレベルで「おっ」と思った程度のことで、やはり総合の印象はあまり良くない。悪くはないのだが。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月27日
長い階段があるから《階段島》。捨てられた者たちが集まる場所。そのてっぺんには《魔女》が住むと云う。――この設定の良く云えば素朴さ、悪く云えば安易さは作品全体に通底していて、読後の印象は空疎だ。それを良しとする者もいるのだろうし、そこに惹かれるひともいよう。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月27日
寓話っぽいんですよね。あくまでも《ぽい》。そう云う設定の話にしたいのか、そう云う設定で何かを喩えたいのか、線引きは曖昧で、その曖昧さを利用して描けるものもあろうに、どっち付かずに終わる。結果、設定や人物、心情、風景は宙に浮いたまま空疎な印象を残す。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月27日
線引きの曖昧さは細部(≠設定)の詰めの不足と云う問題に起因すると思うけれど、では緻密に島を描写し、その住民の暮らし・人生を立ち上げてみたところでそれはもはや同じ作品ではない。この空疎さ、曖昧さ、青さは本作を間違いなく特徴付けている。惜しむらくは、それをあまり面白いと思えないこと。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月27日
作品の空疎さは容易く作品外の情報や印象の介入を許す。作中では、読み手のなかにある記憶や連想のフックを探してなんとか蓋を開こうとする素振りが見える。巧く自分の中の何かに引っかかれば、あるいは豊かな感想を取り出せるかも知れない。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月27日
【逆ソクラテス/伊坂 幸太郎】を読んだ本に追加 → https://t.co/l0SmqKyhjq #bookmeter
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月30日
久しぶりに読む伊坂。最後に読んだのは『首折り』だったか『残り全部』だったか。一時期は著作全部読むくらいの勢いで読みあさっていたのに。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月30日
主題、その扱い、タイトルの語感、人物造形、作品の構成、作品間の繋がり、ツイストとぼかし、文体、台詞回し――何もかもが伊坂幸太郎を感じさせるもので構成されていて最早ここまで来るとセルフパロディの趣もある。それによって悪意と取っ組み合っている点で、なるほど20年目の真っ向勝負だ。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月30日
その揺らぎがもっとも面白いものを生んだのが「スロウではない」。形勢の逆転と印象の逆転を同時に起こして物語が問おうとしているものを一気に突きつけ、そこにキーワードの畳みかけと《逆カットバック》の構成が奥行きを生み出す。読んだことのある伊坂短篇でもベスト。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月30日
キーワードではなかったな。印象的なやり取りのリフレイン。
— Washoe1.9 (@archipelago1999) 2020年5月30日
『天城一の密室犯罪学教程』が文庫化するらしい。いまぼくが未来に抱いている希望と云えば、7月に出ると云うその文庫と、6ヶ月連続刊行されると云うアガサ・クリスティーの新訳――黒原敏行や加賀山卓朗、田村義進など、クリスティーとしては意外な訳者が並んでいる――くらいだ。あとは、幾つかの翻訳書。