鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

 局所的な人間の関係性もまた面白いが、そんな些細なものを呑み込んで世界は続いてしまうと云う感覚がある。人間と云う小さなものが大きな歴史の濁流を形成していく、あるいは、大きな歴史の濁流が人間と云うちいさなものを蹂躙してしまう、そう云う感覚。その濁流を前にしては、名前も知られない人間の関係性など何の意味も持たない。しかしだからこそ、その人間の声なき叫びを聞き取ろうと耳を澄ますことが大切なのだと思う。何と云っても、わたしたちもまた蹂躙される側なのだから。

 そして、今度はわたしたちが、物語る番だ。不条理で不可解で不愉快で不思議な世界と、物語を通して切り結ぶ番だ。濁流に呑み込まれないように。

 

舞踏会へ向かう三人の農夫 上 (河出文庫)

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舞踏会へ向かう三人の農夫 下 (河出文庫)

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チャイナ・メン (新潮文庫)

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ブエノスアイレス食堂 (エクス・リブリス)

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兵士はどうやってグラモフォンを修理するか (エクス・リブリス)

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