鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

書きやすい文体で書くとなると

 こうなる。パワーズの出来損ないみたいだ。
 きのうきょうと書き進めていたが、お話の方がどうにも掴めない。


 その報せを、わたしは早朝の東京駅で受け取る。父の死。音にしてたった四文字。ひと影の疎らなプラットホームで、すべてが静止したかのように灰色がかった薄明のなか、わたしはそれだけの情報に耳を澄ませる。ひと晩もたへんかった。兄は云う。声が震えている。その揺らぎ、抑えられた息づかい、舌と唇の発する湿った破裂音までもデバイスは捕捉してゆく。ほんま、いきなりやった……。携帯を耳に押しつけながらながらわたしは、兄が電話をしたと云う事実について考える。いつもメールを、それも事務的な文面でしか運用しない兄が夜明け、まだ相手が眠っているかも知れない時刻に電話を掛けた。その選択の方が父の死と云う文字列よりもずっと雄弁に、決定的に、父が死んだことを語っている。
 日付は五月一日、メーデー。なんの意味もない偶然だ。四月三十日でもいい、五月二日でもいい。しかしほかのどれでもあり得るにもかかわらず選ばれてしまった一日に、父の生涯は途切れて終わった。
 この一ヶ月はずっと安定してた。それが突然……
 墜落したの?
 え?
 エンジンが止まった飛行機みたいに?
 理解が追いつくまでの短い間。
 そう。
 携帯を持ち帰る音。
 落ちてゆくみたいに、すうっと。
 苦しんだかな。
 この一年に較べれば――。唾を呑みこみ、――ずっと安らかやったと思う。
 わたしは吐息ともつかない相槌を打つ。
 飛行機の喩えを最初に持ち出したのは兄だった。一年前と二ヶ月前、父が最初に倒れたとき。病院の喫茶室で、医者から渡された説明資料から紙飛行機を折りながら、父さんをこの飛行機やとしよう、と。はるか上空、その飛行機は制御系がすっかり壊れている。墜落はほとんど決定づけられ、エンジンの燃料は残り少ない。力業の修理は失敗に終わった。これから父が目指すのは、どこかにあるかも知れない着地点をさがすこと、たとえ不時着に終わるとしても、いつか訪れる燃料切れに向けてなるべく静かに滑空することだ。
 再浮上する可能性は?
 ある。
 でも、と兄は首を振る。父さん自身がそれを望んでない。
 兄は紙飛行機を投げる。ずっと昔に父から褒められたその技量は衰えていない。ジェット機のような十字のフォルムがわたしの頭上を越え、喫茶室の端まで届き、入院着の子供が歓声を上げ、壁にぶつかっていきなり落ちる。ああならないようにしようってこと。兄は肩を竦める。
 それからいままで、父は死に続ける。断続的に、ゆっくりと。
 一年以上もったのだ、とわたしなら思うだろう。けれども兄は、ひと晩もたなかったと嘆いた。
 最後に――結果的には、最後に――父が倒れたと告げる昨晩のメールは、いつものように素っ気なく、いつも以上に形式的だった。帰ってきても良いし、帰ってこなくても良い。夜を徹して駆けつける必要はない。お前は自分の都合に合わせてくれ。以前には語られていた、これが最後になるかも知れないと云う不安と警告は一切確認できなかった。フォーマットをコピー&ペーストしたような文面に、わたしはかえって深刻な病状を察した。文字列よりもずっと雄弁な、言葉以外の言葉。わたしはだから帰郷を決めた。もとより都合なんてものはなかった。
 携帯が鳴ったのは、始発の新幹線を待っていた矢先だ。
 通話の終わりに兄は謝罪を口にした。ごめんな。
 何が?
 間に合わせてあげられへんかった。
 兄さんに何ができたの?
 お前を無理やり呼びつけることもできた
 わたしがそれを悲しんでいると? わたしがそれで兄さんに怒っていると?
 自分の口調の厳しさに、自分でも驚いていた。このまま喋り続ければ、きっとわたしは泣いていただろう。言葉と、言葉にならない全てが鬩ぎ合い、前者が負けようとしていた。
 わたしは撤退する。つまり、形式的なやり取りの後方へ。
 ごめんなさい。
 いや……、すまん。
 ありがとう。
 何が。
 答えは不定だ。そこには形式しかないのかも知れない。
 白鳥のような車輌が目の前に滑りこむ。じゃあ、と携帯を下ろす。兄の声が遠ざかる。席に座ったときにはもう、通信は途切れている。
 駅舎を抜け出して加速してゆく車窓を、わたしは見るともなしに眺める。三時間も眠っていないのに頭は冴えていた。加速に合わせるように白々と明るくなる空を、電線から飛び立つ鳩が横切る。やがて電線は電線であることをやめる。うねりはじめた線は合流と別離を繰り返しながら、どんな鳥よりも早く滑空し、わたしの視覚さえも追い越して走る。そうして走り、走り続け、どこまでも伸びるかと思われた一瞬、ふつり、途切れて一切は影に呑まれてしまう。トンネルのなかに反響する車輪の音。切断される電波。握りしめた携帯電話の表示は、圏外。
 救難信号はもう届かない。


 書きたいテーマらしいものは見えてきたので、まあ、良しとする。

文体の舵を取れ:練習問題⑩むごい仕打ちでもやらねばならぬ

 ここまでの練習問題に対する自分の答案のなかから、長めの語り(八〇〇字以上のもの)をひとつ選び、切り詰めて半分にしよう。
 合うものが答案に見当たらない場合は、これまでに自分が書いた語りの文章で八〇〇〜二〇〇〇文字のものを見つくろい、このむごい仕打ちを加えよう。
 あちこちをちょっとずつ切り刻むとか、ある箇所だけを切り残すとかごっそり切り取るとか、そういうことではない(確かに部分的には残るけれども)。字数を数えてその半分にまとめた上で、具体的な描写を概略に置き換えたりせず、〈とにかく〉なんて語も使わずに、語りを明快なまま、印象的なところもあざやかなままに保て、ということだ。
 作品内にセリフがあるなら、長い発言や長い会話は同様に容赦無く半分に切りつめよう。


 感動の最終回。
 原文には練習問題④の問二を使用した。

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原文

 お兄さんが帰ってくるまで、きみは自分に兄がいることを知らない。よく晴れた春の午後、上がり框に腰掛けている薄汚れた服の男のことを、だからきみは怖いと思う。たまにお母さんが駅の方まで連れて行ってくれるとき、駅舎の柱にもたれかかったり風呂敷を広げたりしている男たちと同じ服だ。同じ服の同じ男たちが、きみは以前から怖くてたまらない。そう云うひとを前にするときと同じように、だからきみはお母さんの躰の陰に身を隠す。二本の脚の間から様子をうかがう。薄汚れた服の男はきみに笑いかける。お母さんは彼を拒絶することなく、それどころかきみを引き摺って前に出そうとする。きみは叫ぶ。お母さんがどなる。お兄ちゃんやよときみのつむじを小突く。
 そんなん嘘やときみは云う。
 嘘云いな!
 男が声を上げて笑う。四月馬鹿やな。そんなん嘘やな。そう、嘘でもええ。
 照れくさいだけや。
 知らんもんは知らんもん。誰やの。
 きのうも云うたやない。お兄ちゃん帰ってくるよって。
 無理ないわ。おれが出てったとき、こおんなちいちゃかったもんな。男は右手のひとさし指と親指を近づけて輪っかをつくる。そんなん嘘やときみは云う。四月馬鹿やなとまた男は笑う。きみはその言葉を知らない。
 早よ帰って来たんやねえ。
 神戸で車持っとる友達と会うてな。無理云って乗せてもろうた。外に駐まってるやろう。
 車? きみは頭を出す。
 お? なんや、車、好きか?
 反射的に、きみは頷く。
 フォードやで、フォード。誇らしげに兄が云う。この辺やと珍しいやろう。
 この子はいつも外の車ばっかり見とるんよとお母さんが云う。排気もあんまり躰に良くないんやけどねと溜息をつく、きみの頭を撫でる。それこそがきみが頷く理由だ。もし頷かなければ、窓さえ閉められるときみは知っている。
 だからきみは、車が好きなふりをする。
 外国の車だ。シートは革が張られて高級に見える。お兄さんの友だちは外で煙草を吸っている。お母さんが眉を顰める。お兄さんはきみを運転席に乗せる。腕をいっぱいに伸ばしても、きみにはハンドルに手が届かない。それぞれの計器がそれぞれの数字を示している。お兄さんはお母さんと喋っている。お兄さんの友だちも混じって、三人は玄関で話し込む。きみがミラーを覗き込んだとき、お母さんたちが家に入るところだ。待ってときみは声を上げる。ドアに身を乗り出す。硬いものが足に当たって落ちる。潜り込むと、シートの下からきみは本を取り上げる。
 日本語で書かれた本だ。厚くて硬い板が切れるように鋭い紙を挟んでいる。芥子色に塗られた表紙には車がたくさん描かれてある。
 車、好きか?
 そんなん嘘やと君はつぶやく。シートに凭れると服がこすれて小気味良い音をたてる。本を腿の上に載せ、きみは最初から読まないで、好きなところのページを開く。

提出作品

 お兄ちゃんやよ。お母さんがきみのつむじを撫でる。
 嘘や。
 この子は!
 男が笑う。四月馬鹿やな。そう、嘘でもええ。
 云うたやない。お兄ちゃん帰ってくるよって。
 おれが出てったとき、こんなちいちゃかったもんな。男は右手の指で輪っかをつくる。嘘や、ときみは云う。四月馬鹿やなと男は笑う。きみはそんな言葉を知らない。
 早やかったね。
 神戸で友達と会うてな。車に乗せてもろうた。
 車? きみはお母さんの陰から顔を出す。
 なんや、車、好きか?
 きみは頷く。
 肺に良くないんやけどねとお母さんは云う。この子いつも外の車ばっかり見とるんよ。それこそきみが頷く理由だ。頷かなければ窓さえ閉められる。
 玄関先に外国の車が駐まっている。艶々したボンネットにお兄さんの友だちが腰掛けて煙草を吸っている。お母さんが眉を顰める。彼はきみを運転席に座らせてくれる。きみが腕をいっぱいに伸ばしても、ハンドルに手が届かない。計器がたくさんの数字を示す。フロントガラス越しにお兄さんたちが見える。三人は家に入ってゆく。待ってよ。ドアに身を乗り出す。硬いものが腰に当たって落ちる。本だ。足許から取り上げる。芥子色に塗られた表紙に車がたくさん描かれてある。
 車、好きか?
 嘘や、ときみはつぶやく。シートに凭れると服がこすれて小気味良い音をたてる。通りには誰もいない。本を腿に載せ、きみは物語を途中から読みはじめる。

コメント
  • 図らずも時期にあう内容になった。
  • みんな練習問題④の問2を使用していたのが面白い。長いので削りやすいし(実際はそんな目算は当てにならなかったのだけれど……)、ほかの回では文体の制限が厳しすぎて削るどころか手を加えることさえ難しいからだろう。
  • ル゠グウィンはチェーホフを引いているけれど、短篇を推敲するならまず書き出しを削れ、と云う教えをぼくはテリー・ビッスンから聞いた。導入をすっぱり削って読み手を小説にほうりこむ手法として、広く共有されているのだろう。
  • ぼくはその教えを無批判に受け容れ、今回は冒頭を削ることからはじめた。合評会での反応を聞く限り、おおむね圧縮には成功したかと思う。
  • とは云え削ればなんでも良いわけではないようで、原文の細部が失われたせいで時代背景が一切伝わらない、空白に突然少年と車が出現するような作品になってしまった。会話もどこか説明的だ。
  • とは云え、書いた文章を全面的に見直す訓練にはなると思う。
  • ぼくはこう云う断片を書くことがけっこう得意らしいと最近わかってきたのだけれど、その「語り」を「物語」にする方法がわからない。アンソニー・ドーアとか断片を積み上げる作家だと思うのだけれど、どうすればああ云うふうに書けるのだろう。
  • そこから先はぼくらへの宿題か。

 進捗がない。


「開けなさい」
 ノックと云うにはあまりに激しい、こぶしが扉を撲る音。窓の鎧戸が下ろされ明かりも落とした部屋、立方体にぴたりと詰まった暗闇のなかで、少年は布団を頭から被る。両手で耳を塞ぎ、ベッドの上に壁を向いて蹲る。瞼を閉じる。歯を食いしばる。それでも喉の奥から震えが這い上がってくる。
「開けなさい!」
 扉越しの声は収まらず、扉はいっそう強く撲られる。振動が部屋全体を揺らしているような気がする。膝のあいだに頭を埋め、少年は涙をこらえる。
「お前は何をしたのかわかっているのか!」
 眦が濡れるのを抑えられない。嗚咽するのを我慢できない。弱虫、弱虫……、少年は自分で自分を罵りながら、世界の終わりを祈っている。


 明かりの落とされた講義室は暗幕も閉めきられ、中央の映写機から放たれる光だけが登壇者の顔を照らす。彼女は椅子に浅く腰掛けながら、スクリーンに映された写真が自身の語りにしたがって切り替わるのを見つめている。


 男が女を呼び止める。自販機が並ぶだけの休憩室は、静寂が求められる図書館で唯一声を出せる場所として学生たちが集っている。
「やっぱり、駄目ですか」
 男の声には、哀願が滲む。女はただかぶりを振って、駄目じゃない、と云う。光差す彼の顔は、しかし続く、でもね、と云う逆接を聴いて翳る。
「でもね、わたしは、乞われたくないんだ」
 ふたりの会話は低く抑えられたものだ。まるでそこでは何も起こらなかったかのように、彼女は部屋をあとにする。残された男が入り口を塞いでいると、三人組の男女が文句を云う。けれど男は、
「違う、違う、違う……」
 そう繰り返すばかりだ。


 波戸岡キヨが倒れたのは夕食を終えてすぐだった。いつもはひと品につきひと口ずつしか食べないのに、その日は主菜を残さず平らげている。最後の晩餐と云う言葉を連想しないはずはなかったが、食事を見届けた介護士は、身体が栄養を求めたんですよとしか述べなかった。わきまえたひとだと成瀬は思ったと云う。ベッドに行き着くまでの数メートルを歩ききることのできなかったキヨを見て、彼は落ち着いて対応した。呼吸と意識の確認、その場でできる最低限の介抱と、速やかな通報。救急車は十分もかけずに到着した。午後八時には、波戸岡家と成瀬家の親族がキヨの病室に集まっていた。今夜が山です、と医者は告げた。一同は慌てなかった。キヨが病院に運ばれるのはこの半年間で三度目だ。夫の銃吾を亡くしてから、彼女は見るからに弱り、やつれ、急速に病で冒されていた。


 以上の文章は、進捗とはとくに関係がない。

文体の舵を取れ:練習問題⑨方向性や癖をつけて語る 問三

問三:ほのめかし
この問題のどちらも、描写文が四百~千二百字が必要である。双方とも、声は潜入型作者か遠隔型作者のいずれかを用いること。視点人物はなし。

①直接触れずに人物描写――ある人物の描写を、その人物が住んだりよく訪れたりしている場所の描写を用いて行うこと。部屋、家、庭、畑、職場、アトリエ、ベッド、何でもいい。(その登場人物はそのとき不在であること)

②語らずに出来事描写――何かの出来事・行為の雰囲気と性質のほのめかしを、それが起こった(またはこれから起こる)場所の描写を用いて行うこと。部屋、屋上、道ばた、公園、風景、何でもいい。(その出来事・行為は作品内では起こらないこと)

前回の続き。

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提出作品:問三①直接触れずに人物描写

 窓の錠はねじが抜けて格子枠のガラス戸が開き、春の風を室内に吹き込んでは、ぎい、ぎい、と軋んで揺れる。中庭の噴水に集う学生たちの声が言葉を言葉として分節できないほどの音となって風に搬ばれてくるけれど、灯りの落とされた室内には窓から外を見下ろす者も、耳を澄ませる者さえいない。空っぽの、肘木の曲線が優美なアームチェア。空っぽの、広々と奥行きのあるデスク。空っぽの、象牙色の壁に囲まれた小さな部屋。和毛のカーペットが隅に除けられ、恰度その矩形と同じかたちに部屋の住人がかつてやって来たときのままの色を残す桜材の床は、大小様々な段ボール箱が山と積まれている。空っぽの本棚。空っぽのキャビネット。空っぽの抽斗。中身は全て山のなかだ。箱の側面にはマジックペンの几帳面な字で「学生レポート」「紀要・論文集」「書類(処分)」「学会資料」「手紙」「書籍(研究)」「書籍(趣味)」「書籍(贈りもの)」――要するに全て紙だった。差し込む午後の陽が紙の山を照らし、影に幾何学模様のパターンを作る。箱にしまわれないまま残された一冊、山のてっぺんに投げ出された大判のアルバムは臙脂色をした厚手の扉が開きっぱなしで、ぴら、ぴら、と風が一枚ずつ記録を捲り、記憶を巡る。アカデミックガウンに身を包んだ学生の姿がある。講堂で発表に臨む学生の姿がある。宴会で酒と議論を交わす学生の姿がある。そこに撮影者の姿はなく、部屋のあるじは顔を見せない。風が吹く。ページが終わる。背表紙に挟まれていた真新しいポラロイド写真が吹き上がる。裏に走り書き。「あなたから学んだことを忘れない」。

提出作品:問三②語らずに出来事描写

 埃っぽいと少年は感じる。けれどもそれはたぶん、場内に充満する酒気、換気されていない半地下の澱んだ空気、大人たちの交わす高揚と嘲笑を孕んだ会話、燃えるような呼気、ひりつくような喧噪、そのなかにひとり紛れ込んでしまった子供にとって怖ろしくてたまらない全てへの緊張がもたらす息苦しさを、ざらついた粒子として感じたに過ぎない。止まり木と椅子を最低限設えただけの店、無骨な男どもを過剰に明るい蛍光が皓々と照らす。男たちは揃って着古したジャケットに履き続けて襤褸のようになったジーンス、それによれたカウボーイハットの出で立ちで、少年の父親は彼らのなかでひとり、ごく平凡な白のワイシャツ姿だった。止まり木に肘をかける父の手を少年は握る。父親はその手を握り返すけれど、視線は店の中央にやったままだ。男たちの太い胴の隙間から少年は、なんとか父親と同じものを見ようとする。ぽっかり開いた空間に、ふたりの男が相対している。大きな図体で仁王立ちになった、牛のような腕を組んだ彫りの深い男。対照的に小柄な背をさらに丸めて膝に手をつく、蛙のように顔の潰れた男。少年はどちらも見ることができない。観衆の会話はがなり立てるように大きすぎるか囁くように小さすぎるかのどちらかで、少年は何がどうなっているかも把握できない。誰かが囃し立てる。牛が腕を広げる。蛙が頭を上げる。周囲の男たちの体温が上がる。父親が手を振りほどく。少年は叫びたくなる。

コメント
  • ①は自信作。アルバムを捲らせるのはちょっとずるい気もするけれど。
  • 追憶するような話しか書けない……
  • ②は以前文章練習で書いたもののリライト。POVが曖昧なものになっているうえ、これはすでに「何かが起きている」のではないか、と云う指摘もある。

文体の舵を取れ:練習問題⑨方向性や癖をつけて語る 問一、問二

問一:A&B

 この課題の目的は、物語を綴りながらふたりの登場人物を会話文だけで提示することだ。
 四百~千二百字、会話文だけで執筆すること。
 脚本のように執筆し、登場人物名としてAとBを用いること。ト書きは不要。登場人物を描写する地の文も要らない。AとBの発言以外は何もなし。その人物たちの素性や人となり、居場所、起きている出来事について読者のわかることは、その発言から得られるものだけだ。
 テーマ案が入り用なら、ふたりの人物をある種の危機的状況に置くといい。たった今ガソリン切れになった車、衝突寸前の宇宙船、心臓発作で治療が必要な老人が実の父だとたった今気づいた医者などなど……

問二:赤の他人になりきる

 四百~千二百字の語りで、少なくとも二名の人物と何かしらの活動や出来事が関わってくるシーンをひとつ執筆すること。
 視点人物はひとり、出来事の関係者となる人物で、使うのは一人称・三人称限定視点のどちらでも可。登場人物の思考と感覚をその人物自身の言葉で読者に伝えること。
 視点人物は(実在・架空問わず)、自分の好みでない人物、意見の異なる人物、嫌悪する人物、自分とまったく異なる感覚の人物のいずれかであること。
 状況は、隣人同士の口論、親戚の訪問、セルフレジで挙動不審な人物など――視点人物がその人らしい行動やその人らしい考えをしているのがわかるものであれば、何でもいい。

 前回は休みました。

提出作品:問一

A もう、出ましたか……
B え?
A もう、出ちゃいましたか。
B はあ……? ……ああ、はい、行ったようですね。
A 参ったな……。次は……、一時間後! これだから、田舎は……
B ……この町は、初めてですか。
A うん……? ええ、初めてです。ああ……、申し訳ない。お住みの方でしたか。悪く云うつもりは……
B いいです、いいです。本当に、田舎なんだから……。本数は年々減るばかりですよ。一時間待てば済むなら、あなたは運がいいほうだ。
A そのようですねえ……。昼間なら、二時間に一本だ。
B お仕事ですか。
A 中央から出張です。そこの……、役場まで。
B 中央。
A たいそうなもんじゃありません。長旅して帳簿をちょっと確認するだけの、使いぱしりですよ。歓迎もされません。
B ああ……、見送りもないらしい。
A 好かれる仕事じゃありませんね。ともすると……?
B はい?
A や、去り際に、引き留められましてね。あれがなかったら、汽車に間に合っていたと思うんです。嫌がらせかな……
B そんなに、悪意あるひとじゃありませんよ。
A ご存知で?
B ……田舎ですから。
A 若い方にはたまらんでしょうねえ。やることなすこと見られてるんだから……。窮屈でしょう?
B まあ……
A だから飛び出すわけだ。
B はあ?!
A わっ……、なんですか……
B そちらこそ……
A ……すみません。こう云うのは若いのから嫌われると、自分で云ったのにねえ……? そこにあるの、ほら、同じトランク。あれ、あなたのでしょう……
B ……ええ。
A だから、同じ……、長旅仲間じゃないですか。わたしは村から帰るところ……、あなたは村から出るところ……、と云うわけだ。
B ……ええ。
A あんな遠くのベンチに置いてると、危ないですよ……
B 泥棒なんて、いませんよ……
A そうとも、限らないですよ。と云うのも、さっき、帳簿を調べましたら……、調べましたらね……?
B 何か……?
A いや、や、や……、あんまりひとに話すことじゃない……
B 聞かせてくださいよ。
A 待合室に入りましょう。ここは寒い……
B 金庫の勘定が合わなかったんでしょう。
A そんな身軽な恰好で、寒くありませんか。
B ひとり居なくなった帳簿係は、痩せぎすの若者だった……
A 寒くありませんか。
B どうして答えないのです……
A それはこっちの台詞です。そんな身軽な、ふらりと散歩するような恰好で。鞄だけ重そうで。……あなたはどこに行くんです。
B ……どこにも行けない。
A 間に合わなかったんですか。
B 間に合った。でも……、でも……
A 間に合ったなら……
B 勇気がないんだ。
A 犯罪をおかす度胸はあるじゃないですか。
B 何もかも嫌だった。爺しかいない役場も、ろくに汽車の停まらないこの駅も、何もかも……、でも、でも……
A ……村長がわたしを引き留めたのは、あなたを逃がしたかったからではないですか。
B 馬鹿な。あいつが……
A 間に合います。
B もう……
A まだ間に合います。あなたはまだ間に合うんだ。わたしも……、間に合って良かった。
B ……寒い。
A ええ。暖かいところへ帰りましょう。

提出作品:問二

 大丈夫だよと河越は振り向いて声をかける。何? びびってんの?
 びびってますよう。天埜の声は震えている。彼の右手に握られたペンライトは小刻みに揺れ、河越の足許の草花を照らす。獣道と云うには明らかにひとの手で拓かれたことがわかる、けれども同じくらい明らかにひとが使っていないとわかる山道だ。
 そりゃそうか。河越は思った。怖がっていないなら、肝試しにならない。しかし河越はすっかり怖じ気づいた後輩を焚きつけるため、置いていくぞと云って歩き出した。落ちた枝や歯を踏みしめるぱきぱきと云う小気味良い音が闇夜のなかで響く。獣や虫の声が聞こえないのはラッキーだ。動物に襲われたり虫に集られたりする方が、河越にとっては避けたいことだった。まだ夏は始まったばかりなのに、そんなことで怪我や病気になりたくはない。
 しばらくして、躊躇いがちの足音が、後ろからついてきた。やっぱりこいつは漢気がある。私有地って書いてありますよと真っ先に河越たちを止めた箕島や気持ち悪いとか云って断った羽良とは違う。ノリの悪いあいつらとは。いちばん最後まで河越に着いてくるのはいつだって天埜だ。大丈夫だよと河越は繰り返した。本当に幽霊が出るならさ、もっと有名になってるって。
 天埜は答えない。
 結構、道がきっついな。徐々に息が上がってくるのを感じて河越は呟く。その、神社? まで? どれくらいだっけ。
 あと少し、と今度は返答があった。
 あと少しです、な。
 また沈黙。
 暗闇に眼が慣れてきて、木々の枝や地形の微妙な起伏がわかるようになってくる。確かに道だったのだろう轍や、足場の岩が時折のぞく。会話が途絶えてつまらない。天埜ってさあ、と河越は切り出す。ミカちゃんとはどうなの? 不細工だけどいい子なんだっけ。絶対メンヘラなるからやめた方がいいよ、ああ云う暗い子。もっと綺麗な子紹介するって。
 返ってくるのは足音だけ。
 ま、ここ紹介してくれたの、あの子だけど。……お、あった。
 懐中電灯をあたり構わず振り回していると、枝葉の隙間に真っ白い人工物がちらりと見えた。小走りに近づくとかなり大きい。それは河越の背の高さほどもある祠だった。河越の後を足音も着いてくる。
 ……しょっぼ。
 そのときスマートフォンが鳴る。突然のベルに驚いたことを河越は声に出さないよう取り繕って応答した。もしもし? 着いた。あったよ。
 相手は箕島だ。ゴエさん、いい加減帰りましょうよ。
 だから着いたんだって。いまから降りる。
 もう、ゴエさんだけっすよ。置いてきますよー。
 ふざけんなよと笑いながら云ってから、……俺だけ?
 みんな下で待ってますから。
 天埜は?
 ゴエさんがとっくに置いてきちゃったんじゃないっすか。マノっちゃん、もう泣いて喚いて大変っすよ。
 ぱき、ぱき、と小気味良い音。
 河越は苛立って繰り返す。だから、天埜はって。
 は? 酔ってます?
 天埜!
 足音が近づいてくる。

コメント
  • 人生初戯曲&初ホラー
  • 問一は別役実を意識しました
  • 問二はホラーで制止を聞かずにずんずん分け入るやつがめちゃくちゃ嫌なので書きました。結局、嫌な人間の心理にまで入り込めているか、と云うと……
  • メンヘラ云々のくだりは過剰に露悪的になってしまった
  • かなり褒められたのでここ数日駄目になっていた心が慰められた

でも、じゃあ、どうやって?

 駄目になっていた。ひとと話すときはいつもの調子に戻るのだが、ひとりになると駄目になってしまう。ただ、用事がない限り出席しようとしていた読書会を、駄目になっているうちに無断欠席してしまった(スマホもまったく見ていなかった)ことをうけて、流石に駄目になっている場合ではない、と思った。文体の舵を取ることもできていない。たぶんこのままだと次も参加できない。そのままぐずぐずと自然消滅してしまいそうな気がして怖い。

 駄目になっていた理由と考えられることは幾つもある。

  • 実家の引越し、およびそれに伴う断捨離
    • 以前の日記にも書いたとおり実家が年内に引越すと云うことで、自室の本を整理した。
    • 実家がなくなる、と云うことがここまで精神的につらいことだとは思わなかった。犬はひとに懐き、猫は場所に懐くと云うけれど、ならばぼくは猫なのだろう。
  • 就活が現実的になってきた
    • 公務員試験は思っていたよりも厳しいものではないのかも知れない、とわかってきて2月初めは気楽に構えていたのだが、人物試験対策講座なるものを一度受けてみて、まあ、これは就活全般に云えることだと思う、つまりはエントリーシートに書くための「人生で何を体験し、どう成長したか」エピソードの作製や、面接のお作法などを、断片的にであれ教えられ、自分でも想像以上に精神的な苦痛を覚えた。気持ちが悪いと思った。
    • もうすぐモラトリアムの日々も終わってしまうのだ、と云う自覚も手伝って、心が軋みを上げている。
  • 休学期間が終わる
    • 休学に至るまでの相談に乗ってくれた教授に、進学をやめて就活を考えていることを相談しなければならない
    • この半年間なにをやってきたんだ?と云う虚無感に苛まれている。
  • 先輩たちの卒業
    • 置いて行かないでほしい。
  • 創作がうまくいかない
    • 本当はこの半年間でバリバリ創作に励むつもりだったが、書けたものと云えば短篇「返却期限日」くらいである。
    • ミステリーズ新人賞に向けて短篇小説をひとつ、2月上旬に書き上げたものの、自分でも納得のいく出来とは云い難く、ひとに見せてもいままでの評判を越えるものではない。書くことによってひとつの経験にはなっても、コンテストに送ることができる代物ではなかった、と云うことだろう。
    • 当該原稿を読んでもらった先輩から云われた「驚かせるためにやっているわけではない、と云うのはスタンスとして潔いが、もっと驚かせても良いのではないか」と云う言葉はかなりアイデンティティクライシスをもたらした、と云うか、そもそもぼくは何が面白いと思って書いていたんだっけ、何が書きたかったんだっけ、それは正当なものなんだっけ、と云った諸々がわからなくなった。
    • なんで書いてるんだっけ。
    • 明言しておくけれども、アドバイス自体はしごく真っ当なものであって、その真っ当な意見にショックを受ける程度に、自分が駄目だった、と云うことです。その先輩には感謝しています。いつか指摘されるべきことだった。
    • 同じ頃、鮎川哲也賞に向けて書きはじめていた連作中篇も、2万字時点で見切りをつけて没にしてしまった。自分の文体を捨てようとしながら手癖に頼った、腐臭のする文体が、本当に気色悪い。
    • どんどん小説が下手になる。
    • と云うわけで、ミステリーズ用に書いた3万字ほどの短篇と合わせて、2月の前半を費やした5万字を棄てることにした。
    • かなり精神的にダメージを負っている。小説を書くのを止めようと、日中、何度も考える。
    • これは良い、次こそは良いものが書ける、と思ったアイディアを転がして一時間後には駄目だこれは、と棄てている。そう云うことを繰り返して時間を浪費している。無駄。無駄。無駄。無。無。無。
    • 何かを読んで蓄積することもできていない。
    • この半年間、いやこの一年間で、小説の書き方を身につけようと思って、結局、わからないことの方が増えた。あらかじめプロットを考えようとすると書いているうちに土台や骨組みが腐りはじめ、考えながら書いているとろくに家が建たない。
    • そもそもこの四年間はずっと無駄なことをしていたのではないか、とも思う。
    • しょうもない恰好ツケに費やしてしまったのではないか、と云う恐怖がある。
    • 「驚かせるためにやっているわけではない、と云うのはスタンスとして潔いが、もっと驚かせても良いのではないか」
    • それは本当にその通りだ。でも、じゃあ、どうやって?
    • 「自分が面白いと思うものを書けば良い」
    • それもまた真だ。でも、じゃあ?
    • どうやって?
    • ぼくは何を書いてるんだっけ?
    • ぼくは何を書きたいんだっけ?

 変わらなければならない。
 でも、じゃあ、どうやって?

文体の舵を取れ:練習問題⑦視点(POV)問四

400〜700文字の短い語りになりそうな状況を思い描くこと。なんでも好きなものでいいが、〈複数の人間が何かをしている〉ことが必要だ(複数というのは三人以上であり、四人以上だと便利である)。
 出来事は必ずしも大事でなくてよい(別にそうしてもかまわない)。
 ただし、スーパーマーケットでカートがぶつかるだけにしても、机を囲んで家族の役割分担について口げんかが起こるにしても、ささいな街なかのアクシデントにしても、なにかしらが起こる【三文字傍点】必要がある。
 今回のPOV用練習問題では、会話文をほとんど(あるいはまったく)使わないようにすること。登場人物が話していると、その会話でPOVが裏に隠れてしまい、練習問題のねらいである声の掘り下げができなくなってしまう。
問四:潜入型の作者
 潜入型の作者のPOVを用いて、同じ物語か新しい物語を綴ること。
 問四では、全体を二〜三ページ(2000文字ほど)に引き延ばせるものを見つけ、そのあとを続けないといけなくなる場合もあるだろう。文脈を作って、引きのばせるものを見つけ、そのあとを続けないといけなくなる場合もあるだろう。遠隔型の作者は最小限の量に抑えてられても、潜入型の作者には、なかを動き回るだけの時間と空間がかなり必要になってくる。
 元の物語のままではその声に不向きである場合、感情面・道徳面でも入り込める語りたい物語を見つけることだ。事実に基づいた真実でなければならない、ということではない(事実なら、わざわざ自伝の様式から出た上で、仮構の様式である潜入型作者の声に入り込むことになってしまう)。また、自分の物語を用いて、くどくどと語れということでもない。真意としては、自分の惹かれるものについての物語であるべきだ、ということである。

 前回、前々回の続き。

washibane.hatenablog.com

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提出作品

 こんな繰り返しを想像してくれ。正方形と正方形が頂点をつなぎ合わせてグリッドをなし、秩序立てられた景色が果てしない。規則正しいその格子柄を目印にして、立方体が幾つも接着した多様な形状のピースを布の上に散りばめてゆく。――これは駅。これは広場。これは大学。置いてゆくうちに布がぴったりとついているテーブルの天板の微妙な凹凸がわかってくる。ないように思われた果てもテーブルの縁から滝のように垂れ落ちる切れ端として存在すると知れる。――これは部室棟。これはその西館。そうして段々、身近になって、彼らはそのなかにいるのだと想像してほしい。現実はどうであれ構わない。彼らにとっていまこの瞬間、部室の外なんてテーブルの上のウボンゴの並びと大差ない。問題は部室のなかだった。中心は、テーブルの上のウボンゴだった。
「三番」
 彼らのひとりの気怠げな声が部室に響いて埃っぽい大気に消える。
 室内は六畳あろうかと云う正方形。四方の壁はところどころに罅の走ったコンクリートの表面を剥き出しにして、天井近くに細長く取られた明かり窓から差し込む午後の陽が北側の壁一面に貼られたポスターと歴代会員の名簿と誰のものとも知れない署名の落書きを菱形にかたどっている。反対に明かり窓の真下の暗い陰で壁を埋めるのは古びて撓んで崩れかけた木製の書架だ。棚が本を収めているのか、本が棚を支えているのかわからない。最前に番号を唱えて手許の砂時計をひっくり返した彼女は名を桐島と云って、その本棚を背に坐っていた。彼女の眼前のテーブルで、ウボンゴは佳境を迎えている。
「三番」
 そう繰り返してピースを手に取った三人のウボンガーは桐島と合わせて四角いテーブルを取り囲み、桐島から見て左手が嘉山、そのまま時計回りに植野、嘉山と云う。各々のスタンスはまるで違った。谷中はピースをあらかじめ身につけた手順通りに組み合わせ――パターンなんだよ、パターン――反対に彼の正面、嘉山は闇雲にピースをぶつけ続ける。――こうか、あれか、そうか、そうだ! 分厚く光沢のないクロスの上で蠢く六つの手。着実ゆえに迅速な谷中と拙速ゆえに緩慢な嘉山に挟まれて、桐島の対面、植野はピースのかたちをひとつひとつ確かめるばかりで組む様子もなく、挙句にはピースから手を離す。
「ねえ、植野ってば大丈夫」
 たまらず桐島は声をかける。それを聞いて谷中は胸を焦がす――先輩じゃなくてぼくを見てください、桐島さん。けれども谷中のウボンゴは完成しない。当然だ。彼はピースを取り間違えている。それに気づいて慌てはじめてももう遅い。植野は瞼を押し上げてピースを持ち上げ、解答を知っているかのように滑らかに、コの字の立体を組み上げた。
「ウボンゴ」
 喘ぎながら谷中は頭を掻く。黙々と組んでいた嘉山が彼の絶望も知らないまま彼を追い抜く。砂時計が無慈悲に時を刻む。滑り落ち続ける砂を陽が照らし、容器のプラスチックに反射する。ゲームは終わろうとしている。植野は対照的な両脇のふたりを見やって肩を竦める。桐島が植野に頬笑む。その頬笑みを植野は何度も見てきた。これまでも。おそらくはこれからも。そうしてゲームは繰り返される。植野の両の掌に包まれる、部室棟と似た立体の、そのなかの部屋の、そのなかのテーブルで。植野は思う。
 ――そんな繰り返しを想像してくれ。

コメント
  • 「ウボンガー」は存在する単語です、本当です。
  • 部室の描写が凝りすぎてよくわからない感じになっている。
  • 最初と最後の台詞が微妙に違っているのは意図してのことで、無限に階層が続く入れ子構造と解釈してもらっても良いし、神の視点と植野の視点が一致した一瞬と解釈してもらっても良い。そもそもうまく宙づりにできているだろうか。