鷲はいまどこを飛ぶか

多くの場合は、小説について。

感想

読書日記:2022/01/11~01/15

ミステリ研にいたこの4年間、ミステリを相対化するばかりで、〝本格ミステリ〟なるものと四つに組むことを避けてきたように思う。 大山誠一郎『記憶の中の誘拐 赤い博物館』(文春文庫) 麻耶雄嵩『螢』(幻冬舎文庫) 綾辻行人『霧越邸殺人事件〈完全改訂版…

読書日記:2021/12/25~12/29

たぶん今年最後の読書日記。年間ベスト記事を年内に書けるだろうか。 ジョン・ディクスン・カー『四つの凶器』(創元推理文庫) 滝口悠生『死んでいない者』(文春文庫) 小森収・編『短編ミステリの二百年〈6〉』(創元推理文庫) ジョン・ディクスン・カ…

読書日記:2021/12/21~12/24

クリスマス・イヴはラファティを読んでAKIRAを観てランジャタイで笑っていました。これはこれで充実している。 感想はミステリ研のDiscordサーバーに投稿したものを転載した。ひとに読んでもらうことを前提としているので、感想と云うより書評に近い文体を取…

読書日記:2021/12/17~12/20+α

クリスファー・プリースト『魔法』(ハヤカワ文庫) カーター・ディクスン『白い僧院の殺人』(創元推理文庫) 『カモガワGブックス Vol.3 〈未来の文学〉完結記念号』(カモガワ編集室) クリスファー・プリースト『魔法』(ハヤカワ文庫) そう、おそらく…

読書日記:2021/12/10~2021/12/15

過去最高に創作意欲が盛り上がっている。何か書けると良いですね。 感想は例によって例のごとく、ミステリ研のDiscordサーバーに投稿したものを転載した。 ジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』(新潮クレスト・ブックス) 「冬のマヨルカ五日間の旅」に出…

読書日記:2021/12/05~2021/12/08

進路に悩んでいる。 もしかすると来年で卒業するかも知れない。しないかも知れない。 いずれにせよ、来年一年かけて、ミステリ研における「卒業研究」と云うべきものを残したいと思っている。 それはさておき読書日記。ミステリ研のDiscordサーバーに書いた…

読書日記:2021/11/25~30

進路に悩んでいます。 それはそれとして読んだ小説の感想。ほかにも研究書とか読んでますが、これまでと同様に省きました。そう、これまでも小説の感想しか取り上げていなかったのです。 感想もいままで通り、ミステリ研Discordサーバーに投稿したものを再掲…

読書日記:2021/11/18~22

クリスティー特集でもしようと思ったけれどミルハウザー読んじゃった。 ミルハウザーの短篇は、こう云うと褒めているようには聞こえないかも知れないが、オーソドックスな海外文芸っぽさと緻密な語りの技巧が冴えていて、妙に安心できる。小説を読むと云うよ…

読書日記:2021/11/06~14

今回の読書日記はテーマなし。読んだあとに振り返って浮かび上がってくるテーマがあるとすれば「虚実」あたりか。 ミステリ研のDiscordサーバーに投稿した感想を転載。 ジュリアン・バーンズ『イングランド・イングランド』(創元ライブラリ) 時が過ぎ、ひ…

読書日記:2021/10/25~30【ロス・マクドナルド特集】

ロス・マクドナルドを3冊読んだ。いずれも中後期の作。今度は初期作にも手を出そうと思う。 感想はいずれもミステリ研のDiscordサーバーに投稿したものを再掲した。 ロス・マクドナルド『ウィチャリー家の女』(ハヤカワ文庫) 消えた娘を探してほしいと云う…

読書日記:2021/10/18~22【ヘレン・マクロイ特集】

ヘレン・マクロイを三冊読んだ。いずれも40年代の作品。同時代をこんなにも突き放して見ることができていたのかと驚く。 感想はいずれも、ミステリ研Discordサーバーに投稿したものを再掲した。 ヘレン・マクロイ『家蠅とカナリア』(創元推理文庫) 侵入し…

読書日記:2021/05/19

勉強しなくてはいけないのだがしていない。と云うか何を勉強すれば良いのかわからない。とりあえずこの辺のひとのを読んでみればと云われた研究論文をいくつか読んだがこう云うのをやりたいのではないと云うことがわかった。入り浸るべき研究室はウレタン鼻…

読書日記:2021/05/05

ゴールデンウイークは平日より生産性が低かった。それなりに忙しかった4月を切り抜けて、気も抜けたのかも知れない。 コリン・デクスター『死者たちの礼拝』 モース4作目。デクスターは好きな作家ではないことがわかってきているのでそろそろ読むのをやめた…

読書日記:2021/04/25

真藤順丈『われらの世紀』を読んだ。以下、雑感。ミステリ研のdiscordサーバーに投稿した感想を転載した。 出版社一押しなのであろう「一九三九年の帝国ホテル」と「レディ・フォックス」は、主題もストーリーも、『宝島』級の長さが必要な作品だった。話運…

読書日記:2021/04/18

パヴェウ・ヒュレ『ヴァイゼル・ダヴィデク』を読んだ。以下、雑感。ミステリ研のdiscordサーバーに投稿した感想を転載した。 海外文学で毎年一冊は出てくる、「何が起きたのか?」「あのひとは何者だったのか?」と云う問いかけをミステリ的な手続きで追求…

読書日記:2021/03/31

青山文平『泳ぐ人』を読んだ。以下、雑感。ミステリ研のdiscordに投稿した感想を転載した。 文章が巧い。わけても料理描写は卓越している。これは大変重要なことです。 それはさておき。 19世紀江戸のシステマティックな社会で起こる様々な刃傷沙汰とその裡…

読書日記:2021/03/15

阿津川辰海『蒼海館の殺人』を読んだ。前作は未読なので的を外した感想かも知れないが、以下、感想を残しておく。もともとはミステリ研内のdiscordサーバーに投稿したものに、少しだけ手を加えた。 嵐に見舞われた屋敷とそこに住む家族の謎――と云ういかにも…

読書日記:2020/08/23

なんだか気分が乗らなくてブログを更新していなかった。比較的暇な時間である夜はYouTubeでポケモンのゆっくり実況とかを眺めていた。人間の生の声・息遣いが直接聞えるゲーム実況は申し訳ないがよほどの美声でなければ(つまり声を職業にしているわけでもな…

読書日記2020/08/11

感情をむきだしにした議論の際によくあるように、事実にのみ気を取られて興奮し、それゆえ事実をゆがめることもあえてしようとするある集団の現実的な利害は、それとは反対に事実にはいささかの興味も持たず、事実を単に〈観念〉への跳躍台と見なす知識人の…

読書日記2020/08/05

前回の読書日記が微妙に拡散されたらしい。念のために書いておくと、ぼくはまったく体系立てて読まないひとを批難するつもりはない。体系立てて読むべきだと強制もしない。自分の体力・気力・趣味嗜好と相談しながら、好きに読めば良いと思う。ただ、読んだ…

読書日記2020/08/03

伴名練=編『日本SFの臨界点』の[恋愛篇][怪奇篇]を読んだ。ナンバリングしていないのはあわよくば続篇を出そうとしているからだろうか。 このところしばらく、小説を読むことができない、なにが面白くて小説を読んでいたのか思い出せない、と云う状況が…

読書日記2019/05/15 エラリイ・クイーン『フォックス家の殺人』

アメリカの田舎町ライツヴィルはにわかに沸き立っていた。この町に生まれ、第二次世界大戦で活躍した英雄――デイヴィー・フォックス大尉が帰還したのだ。しかし、彼を褒めそやし祭り上げる周囲に反して、デイヴィー自身は自らが犯した殺人の罪と戦争の悲惨さ…

読書日記2019/05/13 ドロシー・L・セイヤーズ『ナイン・テイラーズ』

前回の投稿が46日前だから、ほとんど1ヶ月半ぶりの更新だ。1ヶ月に一度は更新したいと述べておきながら、上半期を終えることもなくこの体たらく……、忸怩たる思いがある。これからはもっと更新頻度を上げたいですね。 最近、海外長篇ミステリを読みたいと云う…

読書日記2019/02/21 イアン・マクドナルド『旋舞の千年都市』他

SFを読む意欲が湧いてきたので、積んでいたSF長篇を3冊読んだ。SFを読むと云う今年の抱負を、早速実践したことになる。 イアン・マクドナルド『旋舞の千年都市』の舞台となるのは、近未来のイスタンブールである。ヨーロッパとアジアの狭間、様々な勢力が取…

読書日記2019/02/13 アガサ・クリスティー『象は忘れない』

《回想の殺人》と云うテーマが最近気になっている。過去に起こった、記憶の中の事件を解決する形式のミステリのことで、代表的なのはアガサ・クリスティー『五匹の子豚』だろう。この形式の場合、事件は目の前に展開されることはなく、資料や証言、そして経…

読書日記2019/02/07 ダリル・グレゴリイ「二人称現在形」他

テストが終わり、単位については人事を尽くして天命を待つ状態となったので、開放感に任せて図書館に行った。〈S-Fマガジン〉を読むためだ(京都府立図書館はごく初期を除いて、〈S-Fマガジン〉のバックナンバーが揃っている。優秀!)。読んだのは単行本未…